人の欲望が持つ力は強い。
とてつもなく強い。
「欲望」
それ自体に大きな求心力がある。
人は「シンボル」にすぎないのだ。
「欲望の象徴」
そこに人が集まる。
だけれども、
何もネガティブなことばかりではない。
「困っている人の助けになりたい」
「多くの人と気持ちを共有したい」
「世界を平和にしたい」
そうした欲望のもとにだって、
人はたくさん集まるのだ。
信念とか理念、
それだって欲望の一つ、
人の集まりは欲望を満たすための共同体、
そう捉えると色々なことに合点がいく。
「不安から逃れたい」
だから結婚する。
「ほとばしる熱いパトスを開放したい」
だから交際して体を重ねる。
人と人とが惹かれ合うこと、
その根底には欲望への共感があるのだ。
私の欲望はどこにあるのか。
「誠実でありたい」
そう思っていたけれど、
なんだかそれにも疲れてしまったな。
それを目指していたところで、
損をしてばかり、
食い物にされてばかり、
消耗してばかりなのだ。
そうやってみんな、
もっと早くに「欲望」に正直になるのだろう。
そして、それを隠しながら、
うまいこと人と接することに慣れるのだろう。
私はきっと遅すぎたくらい。
「人並み外れた理性の持ち主」
かつて読者の方に言われた言葉、
尊大な理想を掲げていたから、
どんどん行き遅れてしまうのだ。
こと、恋愛に関しては、
それで色んな経験を逃して、
人生が色あせてしまったら本末転倒、
もっと「欲望」に正直になろう。
そうでないと楽しいことが抜け落ちた人生になってしまう。
「こういうもの」って、
そう割り切ることができれば、
こんなに傷つくことなんてないはず、
執着を手放すこと、
「誠実」はその最後の砦だと思っていたけれど、
どうやら「欲望」には勝てないようだ。
「誠実」を手放した先に、
私には何が残っているのだろう。
たまらなく好きになった人に、
気持ちをまっすぐに伝えて、
相手もそれに応えてくれて、
そんなものは理想に過ぎなかったのだな。
夢でしかなかったのだな。
夢の国の住人はもう終わり、
ネズミに手を振って、
現実世界を生きなければならない。
「欲望に魅了された人間」
そういう類のモンスターばかりが蠢く、
「現実」という世界の中で生きていかないとな。
理想の恋愛をして結婚に至る。
そんな人はこの世にどれだけいるのかな。
強くならないと、
強く、たくましく、
綺麗に見えても、
よく見ると棘で体を守っている。
不用意に手を触れると怪我をしてしまう。
女性はみんなバラのようだ。