燃え上がるような恋、
周りのことなんて気にならない。
二人だけの世界、
唇を重ねて、
肌が触れ合って、
体は気温に負けじと熱を帯びてゆく。
「二人でどこまで行けるかな」
「君とならどこまでだって行けるさ」
そんな気持ちを確かめる以外の用途では、
まるで役には立たない言葉をかわしながら、
「イマ」さえあればいい。
そうして目の前の「カラダ」に夢中になる。
男と女は別の生き物だから、
行為が終わると、
その熱量にすれ違いが生じる。
「あれだけ心が繋がっていたはずなのに」
夏の魔物にほだされて、
一瞬で燃え上がっては見たけれど、
冷めるのも一瞬、
「今日はありがとうございました」
そんな建前だけの挨拶で、
簡単に糸は途切れてしまう。
「運命の赤い糸」
そんなものは幻想に過ぎないんだよ。
あまりにも現実が辛いからって、
人が作り出した精神安定剤、
だって、
人は個体が違えば別の生き物、
わかり合っているつもりになっても、
完全にわかり合うことなどできないのだ。
夏が終わりに近づいている。
涼し気なグリーンのワンピースを着た、
彼女の後ろ姿とともに、
夏は私のもとから去っていく。
熱くて暑い夏、
蝉たちの鳴き声とともに、
「私を忘れないで」って、
最後にひときわ熱く暑く輝いて、
別れ話を切り出した後に、
面と向かって言ってはくれなかった、
愛の言葉を今更もらったところで、
どうすることもできないよ。
わずかばかりの余熱を私の心に残して、
夏が終わる。