気がついたときにはもう空っぽ、
カラカラに干からびて、
一滴も残っていない。
「気持ちはつながっていた」
そう思っていたけれど、
いつだって一方通行なのだ。
去りゆくあの子は、
「女」としての自尊心を満たして、
どこか得意気に映る。
また補充しないといけないな。
傷を癒やして、
ジョウロで毎日少しずつ、
大事に、大事に潤いを与えて、
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
次はきっと、
報われるはずだと信じて、
震える手を、
同じように震えるもう片方の手で必死に支えて、
毎日、毎日少しずつ、
水をやり続けるのだ。
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
ようやく少しは湿ってきたかな。
手の震えもおさまってきた。
もう少しの辛抱だ。
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
手の震えは止まったし、
足だってほら、
ゆっくりだけど前に進めるようになった。
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
もう大丈夫、
ようやく前に進めるかな。
後悔だけはしたくない。
もう一度あの子に会いに行こう。
女「あなたのことが心配だったの」
男「そう言ってくれて嬉しいよ」
女「あなたの大切さに気がついたの」
男「僕はずっと大切に思っていたよ」
女「不安で不安で仕方がないの」
男「これからはずっと側にいるからね」
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
見たくもないものを見てしまった。
あの子が他の男と仲良く歩くところ、
作り物のように冷たく整った笑顔を携えて、
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
どうやら相手はどこかの貴族、
地位も名声もあるようだ。
僕には勝てるところなんてないな。
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
女「嫌ならば別れましょ。それがあなたのためなのよ」
男「待ってくれ、一度ちゃんと話し合おう」
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
女「もういいわ。別れましょ」
男「わかった。それが君の幸せならば」
少しずつ、
少しづつ、
すこしずつ、
すこしづつ、
気がついたときにはもう空っぽ、
カラカラに干からびて、
一滴も残っていない。
「気持ちはつながっていた」
そう思っていたけれど、
いつだって一方通行なのだ。
去りゆくあの子は、
「女」としての自尊心を満たして、
どこか得意気に映る。
また補充しないといけないな……