「手を出して」
無邪気に差し出されたその手を、
僕は優しく握りしめた。
「どういうこと?」
そう戸惑う彼女に対して、
「手、つなぎたいなと思って…」
そう返すと、
彼女も少し弾んだ声で、
「そうだね」って、
そう返してくれた。
エスカレーターを前にして、
一段先に踏み出した僕の後ろから伸びる、
白くて柔らかい手、
「リードしないと」
そう意気込む僕を気遣うように、
一段前に踏み出す彼女、
隣に並んでくれた。
「カッコつけなくていいよ」
その踏み出した一歩は、
そう伝えるかのようだった。
そんな二人を運ぶ十数秒、
「この時間が永遠に続けばいいのにな」
だけれどもそうは行かない。
ここから先は自分の足で歩くのだ。
結ばれた手をしっかりと握って、
二人並んでそれぞれが自分の足で歩くのだ。
歩幅がずれたっていい。
少しばかり休憩したっていい。
だけれどもいつも一緒に、
時には手を引いて、
時には手を引かれて、
そうやって進めばいい。
天が二人を分かつその日まで、
この手は絶対に離さない。
だから今ここで思いを伝えよう。
「すきだよ」って、
「これからもずっと一緒にいたい」って、
7月13日、
今年一番幸せだった日の思い出、