小さい頃は、
無限の可能性が広がっていて、
これから何にだってなれるって信じていた。
「幼稚な全能感」というやつ、
だけれども、
歳をとるにつれて、
徐々に魔法は解けていってしまうのだ。
「上には上がいる」
そうやって挫折して、
努力の限界を痛感して、
人生に折り合いをつけていく。
そういうことを繰り返していると、
そのうちに自分の可能性を信じられなくなる。
あれだけ、
「なんでもできる」って、
心の底から信じていたのに、
もう一度自分のことを、
魔法にかけることってできるのかな。
根拠のない自信を取り戻して、
ひたすらに努力を繰り返す。
そういう自分に戻ることってできるのかな。
「挫折は人を強くする」
「折れない自分」ではなく、
「しなやかな自分」に変わるから、
だけれどもそれって、
見方を変えれば妥協なんじゃないのかな。
大人になるってそういうことなのかな。
「振り返ればいい人生だった」
人は最後に自分を納得させる。
無理やりにでも納得させる。
費やした時間を否定したくないから、
人生ってその繰り返しなのかな。
後ろを振り返れば無数のしかばねが転がっている。
その中をここまで進んで来られたのだから、
自分の人生は上出来だった。
「人と比べる必要なんてない」って、
自分に言い聞かせながらも、
人と比べては一喜一憂して、
死の直前に至る境地って、
どういうものなのだろう。
どんな人生だって、
費やした時間の分だけ、
愛せるものなのかな。
「最後に後悔しない人生」
それを理想に掲げない人はいないはず、
結局、人は自分のことを肯定したいのだ。
その行動を、
その人生を、
そして費やした時間を、
それを否定してしまったら、
生きている理由がわからない。
感情に流されて、
不誠実な仕打ちをしたところで、
時間が経てばそれを肯定している。
「ご都合のよろしいことで」
みんな自分のことが大好きなのだ。
だから自然と、
気がつかないうちに、
自分に魔法をかけ続けているのかな。
魔法は解けているようで、
解けていないのだ。
大人になるにつれて、
より巧妙に自分を騙して、
魔法をかけ続けている。
生きるって、
とても辛いことだから、
「希望」
そういう名前のにんじんを目の前にぶら下げて、
魔法をかけ続けているのかな。
それを信じて走り続けていれば、
結果に関わらず「やり切った」と思えるはず、
そうやって自分を納得させる。
人生ってうまくできているのだな。