ビルの隙間から差し込む柔らかい光、
穏やかで心地よい。
もう下旬に差し掛かる。
なのにここまで暖かい。
2月は逃げるように去っていく。
「今年の冬は中止になりました」
まるでそう言われているみたい。
今年は本格的な冬って来ないのかな。
全然寒くないのだ。
空気は澄んでいるけれど、
どこか丸みを帯びている。
お日様のお陰かな。
心は凍えてしまいそうだから、
せめて体は冷やさないようにって、
気を使ってくれているのかな。
「春は、まだ来ない」
いつだってそう。
来そうで来ないのだ。
何度も何度もその訪れを予感するけれど、
その予感は外れてばかり、
どうしたらここまでうまくいかないのだろう。
自分でもわからない。
街ゆく人々は当たり前のように、
相手を見つけているのに、
理想が高すぎるのかな。
それともそういう運命なのかな。
期待に胸を膨らませても、
その期待はいつも消化不良で終わる。
私の心と体に傷跡だけを残して、
「冬が寒くって本当によかった。
君の冷えた左手を僕の右ポケットにお招きするための、
この上ないほどの理由になるから」
何度も肩は触れるけれども、
その手に触れることはできなかった。
飲み物を手渡すときでさえ、
触れないように慎重に、
臆病だったのかな。
あの時、
ぎゅっと握りしめることができたならば、
結果は違うものになっていたのかな。
だけれども、
今年の冬は「この上ないほどの理由」を作ってはくれなかったのだ。
そうやって冬のせいにしてしまえばいい。
また次に向かって進むのだ。
春はもうすぐそこまで、
恋は今終わった。