「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

今年の冬は中止になりました

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ビルの隙間から差し込む柔らかい光、

穏やかで心地よい。


もう下旬に差し掛かる。

なのにここまで暖かい。

2月は逃げるように去っていく。


「今年の冬は中止になりました」

 

まるでそう言われているみたい。

今年は本格的な冬って来ないのかな。

全然寒くないのだ。


空気は澄んでいるけれど、

どこか丸みを帯びている。


お日様のお陰かな。


心は凍えてしまいそうだから、

せめて体は冷やさないようにって、

気を使ってくれているのかな。


「春は、まだ来ない」

 

いつだってそう。

来そうで来ないのだ。


何度も何度もその訪れを予感するけれど、

その予感は外れてばかり、


どうしたらここまでうまくいかないのだろう。

自分でもわからない。


街ゆく人々は当たり前のように、

相手を見つけているのに、


理想が高すぎるのかな。

それともそういう運命なのかな。


期待に胸を膨らませても、

その期待はいつも消化不良で終わる。

私の心と体に傷跡だけを残して、


BUMP OF CHICKENスノースマイル


「冬が寒くって本当によかった。

君の冷えた左手を僕の右ポケットにお招きするための、

この上ないほどの理由になるから」


何度も肩は触れるけれども、

その手に触れることはできなかった。


飲み物を手渡すときでさえ、

触れないように慎重に、

 

臆病だったのかな。


あの時、

ぎゅっと握りしめることができたならば、

結果は違うものになっていたのかな。


だけれども、

今年の冬は「この上ないほどの理由」を作ってはくれなかったのだ。

 

そうやって冬のせいにしてしまえばいい。

また次に向かって進むのだ。


春はもうすぐそこまで、

恋は今終わった。