「不要不急の外出は控えてください」
それでも相変わらず通勤電車は満員だ。
誰もが不穏な空気を感じているけれど、
誰もが他人事、
大きなものに身を委ねすぎて、
考える隙間もなく、
同じことを同じように同じ場所で繰り返す。
「居場所がある」
それだけで満たされるのだ。
誰にも必要とされなくなることのほうが、
新型のウイルスよりも怖い。
正だか負だかもわからない、
そんなエネルギーをため込んでいても、
吐き出す先は多くはない。
「渇く」
吐き出す先のない気持ち、
内に秘めた熱に晒されて、
カラカラに渇く。
「渇く」
無機質な人間関係ばかり、
心に潤いが足りなくて、
カラカラに渇く。
心からの「愛してる」を、
囁きあえるような、
そんな相手を望み続けている。
それは近くに見えるけれど、
手を伸ばしても届かない。
はじめは必死に手を伸ばしていたけれど、
いくら臨んだところで、
簡単には手の届かないことがわかってしまった。
裏切られるたびに、
「またか」って、
傷つくと同時に胸をなでおろす。
カラカラに渇いているから、
少し心を動かすだけでも、
擦れてヒリヒリ痛む。
もう動きたくないのだ。
「渇く」
誰か私を潤してよ。
人知れず干からびてしまう前に、
誰でもいいから、
私の心を潤してよ。
オアシスを求めて彷徨い続けるのには、
もう疲れてしまった。