道は走る人たちで溢れている。
学校の始まらない子供たち、
テレワークのサラリーマン、
時には親子で揃って、
そんな姿を見かけるようになった。
外出自粛が長引くものだから、
痺れを切らして体を動かしたがる。
だから走るのだ。
ひたすらに息を切らして、
力の限り走るのだ。
悶々としながら過ごす。
将来への不安は拭えない。
収入は大丈夫か。
会社は大丈夫か。
居場所は守れるのか。
自分は感染していないのか。
大切な家族は大丈夫か。
そんなことばかりがグルグルと、
頭の中を駆け巡る。
だから走るのだ。
ひたすらに、
ただただ息を切らして、
走るのだ。
何も考えなくていい。
体の鼓動を感じて、
「どうにかして酸素をより多く取り込もう」
そんな体の発する指令だけに心を傾けて、
ただ呼吸の苦しさにだけ耐えていればいい。
だから走るのだ。
人には何も考えない時間が必要、
不安ばかりに脳の中を支配されないために、
脳を休ませてやる時間が必要、
息を切らした末に、
不安ばかりだった頭を空っぽにしてあげれば、
その空白に最初に入るものは「心地よさ」
生に対する実感だ。
「私は生きている」
それを実感するための作業、
それは不要不急といえるのかな。
私は走る人を応援したい。
孤独に苛まれながら、
不安に耐えながら、
ただただじっと我慢して生きる。
そんな生活に彩りを添えるための、
そのためのささやかな術、
ランナーたちよ。
コロナに負けるな。