「医療崩壊」
そういう声が聞こえてきて久しい。
奥様が看護師、
そういう知り合いから聞いた。
「嫁が大変すぎて、
「医療崩壊」よりも先に「家庭崩壊」が起こりそう」
支えるご家族も大変なのだろう。
日本でもようやく騒ぎ始めた頃の武漢で、
使命を果たすと決めて、
自らの結婚式をキャンセルしてまで患者の治療にあたり、
そのまま感染して亡くなった医師がいた。
医療従事者の使命感というか、
覚悟というものはすごい。
私なんか自分の命と向き合うことも怪しいのに、
毎日、誰かの命と向き合うって大変なこと、
ある看護師は生活ままならず、
仕事以外はほとんど寝て過ごしているみたい。
自分の危険を顧みる暇などない。
ただでさえ忙しいのに、
次から次へとひっきりなしに、
しかも感染症だ。
格段に神経を使う。
不安を抱えながら、
家族のことを思いながら、
手足を止めることはできない。
ただただ気力を振り絞り、
家にたどり着くと何もできずに倒れ込む。
出勤時も退勤時も、
外出しているだけで冷たい視線を向けられる。
私は毎日戦場に向かっているのに、
「私って何のために生きているのだろう」
風呂上りのハーゲンダッツも、
寝る前の心地よいひと時も、
しばらく味わうことを忘れていたな。
そんな日々を送っているのかな。
大丈夫、
何もできない時間は必要だ。
そんな時はただ休んでいればいい。
自分を思い切り甘やかしてあげればいい。
あなたは命と向き合って、
とても疲れてしまったのだから、
とても大変なこと、
だけれども、
それは誰かがやらなければならないこと、
あなたはその役割を全うしているのだから、
雑音は耳に入れないで、
優しい言葉だけに耳を傾けて、
今はゆっくり心と体を休ませてあげればいい。
あなたがいなければ、
あなたを必要とする多くの人が、
生きる力を失ってしまう。
自分も入院した時にそうだった。
その励ましの声が、
何気ない気配りが不安をかき消してくれる。
だから誰かを励ますために、
その力を補充するために、
ただただゆっくり休めばいい。
「医療関係者」
一口に言っても、
色々な役割があるだろう。
きっとそのどれもが命を支えている。
一つ欠けただけでも物事はうまく回らなくなるのだろう。
病院の受付の方、
「会計が遅い」って罵倒されているのを見たことがある。
病院と言うのは不安が渦巻くところだから、
人は正気ではいられない。
不安だったのだろう。
診察から出てくると私の隣に座って、
そのまま携帯を取り出した初老の婦人、
誰かに話を聞いて欲しい。
「久しぶり、今、病院でがんだと診断されたの」
って、
おもむろに話し出した。
私は本を読みながらも聞き耳立ててしまった。
病院って、
きっとこういうことが日常なのだろう。
見えないところで、
知らないところで、
患者の不安からくる、
抑えようのない悪意に晒されて日々耐える。
そんな苦労がきっと、
たくさんの命を支えている。
だから負けるな。
医療関係者たち、
コロナに負けるな。