「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

アニメ『鋼の錬金術師』全64話を見た

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ずいぶん前に原作は一通り読んでいるから、

「あー、こんな感じだったか」って思いながらも、

改めてよくできた作品だと感服した。

 

テーマは「命の使い方」

 

亡くなった母親を生き返らせるために、

錬金術の禁忌である「人体錬成」を行った兄弟の物語、

 

結局、母は戻ってこない。

 

さらに禁忌の代償として、

肉体全てを失い魂だけになった鎧姿の弟と、

右手、左足を失ってオートメイルと呼ばれる武装を纏う兄、

それぞれの肉体を取り戻すために故郷を捨てて旅に出る。

 

「不老不死」

 

使い古されたテーマだ。

それを求めて人は神に近づこうとする。

 

だけれどもそれを求める過程で、

それよりも大事なものに気が付く。

そういう王道の筋書き、

 

荒川弘さんの次作『銀の匙』はほっこりと、

命の尊さを説く作品、

 

土臭さが必要なのだ。

人は自然とともに生きて、

自然に満たされる。

 

いくら不自然なものに囲まれて、

その生活に染まっていても、

どこか満たされないのだ。

 

だから自分自身で、

自分を満たす何かを見つけなくてはならない。

 

錬金術の原則とされる「等価交換」

何かを得るためには、

同じくらい価値のある何かを手放す必要があるのだ。

 

「命をどう使うか」

 

費やした時間、

それだけではない。

理想を手に入れるために消費した気持ちや労力、

そして勇気、

 

そういうものを差し出すからこそ、

人は「理想」を手中に収める。

「実感」という極上のスパイスと共に、

 

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ラストのシーン、

「人は何かの犠牲なしには何も手に入れることはできない」

 

ひょんなことから舞い込んで手に入れた成功、

手に入れた当初は天にも昇る喜びに包まれたとしても、

そういうものって時とともにコンプレックスになるのかもしれない。

 

「自ら成功をつかみ取った経験」

 

人はめんどくさい生き物だから、

人生にそういうものを求めているのだ。

 

醜いから美しい。

醜いところも愛しい。

 

「恋は盲目」というけれども、

「愛」だって盲目なのだ。

 

愛するあの人、

愛しい子供や家族、

 

そういうものに対して、

人はバイアスをかけて最後まで信じようとする。

 

「居場所」を守るためならば、

鬼にも悪魔にもなる。

 

「理性」の届く範疇なんて、

所詮は自己解決できる部分にしか及ばない。

 

「居場所を守る」ことと、

「人の道を守る」こと、

 

その両者のどちらかしか選べないときに、

人の真価は問われるのかな。

 

人間を下等生物と馬鹿にする、

人造人間のホムンクルスたち、

それを道化にして人の「業」や「醜さ」を浮き彫りにする。

 

人間をバカにしながらも人間に嫉妬し、

孤高を気取りながらも誰よりもぬくもりを求めている。

「めんどくさい」と口癖のように唱えながらも勤勉に働き、

尽きることのない強欲に身を支配されながらも、

仲間に対する義憤を持ち合わせている。

 

人に宿る「正」と「負」の感情は表裏一体なのだ。

独立して存在するものではない。

 

ある時は「正」に傾き、

ある時は「負」に陥る。

 

「正」の時の自分を知っているからこそ、

「負」の自分を許すことはできないし、

「負」の自分から抜け出すために、

「正」への活力が生まれる。

 

一面だけを切り取ってはいけない。

「正」も「負」も自分自身なのだ。

 

「人の業は深いから、真理は絶望を与える」

 

そんな象徴的な描写、

 

求めるほどに得難く遠のいていく。

「理想」ってそういうものなのかな。

 

いや、きっと「理想」を手に入れてから、

それを当たり前のように感じ、

さらなる「理想」を追い求める。

 

そんな尽きることのない欲望、

 

それが「報われない」って、

そんな不満を作り出しているのかもしれない。

 

「等価交換」

 

どこかで折り合いをつけなければ、

果てしない欲望に飲み込まれてしまう。

 

だから手の届く範囲、

その範囲で幸せをつかみ取り、

土の匂いに包まれて、

自分は大いなるものの一部に過ぎないと感じると同時に、

その中に「居場所」を見出すこと、

 

それを自らの経験からつかみ取ることができれば、

人生における最も大きな宿題は、

クリアしたも同然なのかもしれないな。

 

鋼の錬金術師

 

深く力強く「命の本質」を問う作品、

少し長かったが短期間ですべて見てしまった。