
このお方は本当にすごい。
「藤井くん」が瞬く間に「藤井二冠」になってしまった。
その実力もさることながら、
言葉の端々に感じる「謙虚さ」であり、
深い洞察から来るのであろう「生きる姿勢」
目を見張るものがある。
おそらく本人は、
「努力している」という感覚は微塵もないのだろう。
二冠となった際のインタビューで、
印象的な一言があった。
記者からの、
「この結果に対して自分へのご褒美はありますか?」
そんな質問に対して、
「自分にとって思った以上に、この上ない結果だったので、
自分でご褒美というのはあまり考えていません」
素晴らしい回答だ。
少し前のインタビューではこんな回答もあった。
記者からの答えにくい一手、
「将棋の神様に会う機会があったらお願いしたいことは?」
そんな質問に対して、
「将棋の神様というものが存在するならば、
一局お手合わせを願いたいです」
富も名声も求めてはいない。
天に行く末を委ねるわけでもない。
ただ「強くなりたい」
そんな気持ちを率直に表す回答だ。
「生きがい」
おそらく藤井二冠にとっては、
「己の棋力を高めること」が「生きがい」なのだろう。
だから結果に気持ちを動かされない。
弱冠18歳にして、
これほどまでに人として揺るがない。
加えて自意識に固執するでもなく、
「謙虚さ」を持ち合わせている。
もはや「悟り」の境地だ。

一転して漫画の話になるけれど、
思い出すエピソードがある。
長らく少年ジャンプで、
絶賛休載中の『HUNTERxHUNTER』だ。
その中のキメラアント編、
知能を持ち、人を捕食する未知の生物キメラアントの「王」が、
人類を統べるべく兵法を学ぶための余興として、
ボードゲームに目をつける。
人知を超えた学習能力を持つ「王」の前に、
囲碁と将棋の世界王者は数局で敗退を喫する。
ところが「軍儀」と呼ばれる、
漫画オリジナルの将棋に似たゲーム、
その世界王者は「コムギ」という目の見えない少女だ。
人知を超えた「王」だが、
「コムギ」とは何度対戦しても勝ち筋が見えてこない。
そこで「王」は「コムギ」の心を乱すべく、
次の対局で自分に勝てば「望むものをなんでも与える」
その代わりに負ければ「お前の右腕を引きちぎる」と脅す。
それに対する「コムギ」の返答はこうだ。
「負けたら自分の命を差し上げます」
目の見えない彼女は「軍儀」以外に取り柄がなく、
貧しい家族の中では足手まとい。
だから一度でも「軍儀」で負けたら死ぬと決めている。
そういう理由だった。
彼女にとっては、
「軍儀」が生きる目的のすべてなのだ。
その回答を聞いた「王」は、
「コムギ」の望むものに「王の命」を想定していなかったと、
己の駆け引きを恥じて自らの右腕を引きちぎる。
それを好機にハンターたちは、
王討伐の機会を得る。
そんな本筋につながっていく。
この「コムギ」のエピソードは極論だ。
だけれども「負けたら命を絶つ」
それくらいの覚悟で一つのものに人生を懸ける。
そういう姿勢は、
藤井聡太二冠に通じるものがあるんじゃないかな。
「己の棋力を高めること」
おそらくそれに人生を懸けているのだろう。
だからどこまで行ったとしても驕ることはない。
「飽くなき向上心」
ある意味では人生を質に入れる行為だ。
だけれどもそれに「身を委ねる強さ」
そこに生まれる輝きは美しい。
一つのものに人生を預けることを恐れて、
世界を俯瞰することばかりに気を取られていたけれど、
どこかで何かを選択しないといけないのかな。
「藤井聡太二冠」
これから先の未来、
どのような歩みを進めていくのか。
一人の人間として、
とても興味深い。