共通の知人の紹介で出会った二人、
店に入り食事を済ませた後、
会話がそこそこ弾むようになってくると、
「共通の知人」は不意にスマホを取り出して、
「急用が入ったから、あとは二人でよろしく」と、
わかりやすい嘘をつき、粋なことに会計まで済ませて去っていく。
取り残された二人、
彼は彼女のことを、一目見た時から「この人かもしれない」とそう思った。
だけれども、伏し目がちな彼女の姿に躊躇して次の誘いを切り出せないでいる。
次につながるアプローチをできないまま、店を後にする。
彼女のことを意識してからは、うまく目を見て話すことができない。
悶々とする帰り道、彼女の熱を感じながら並んで歩いていると、隣からは「あの、」という少し上ずった声、
「はい、」と同じく上ずった声で応えると、
伏し目がちに「また会いたいと思っています」と彼女、
「僕も同じことを思っていました」
そんな言葉が口をつくと同時に、二人の視線は重なった。
見つめ合う二人、
「好き、」
「好き、だなんて初対面でいい加減なことは言えないけれど、
きっと次に会う時までには好きになっていると思います。
また誘ってもいいですか?」
「はい。喜んで」
彼女は笑顔でそう答えた。
スマホを取り出すスベスベとした綺麗な手、
近づく顔、触れ合う指と指、
確かにLINEでつながったことを確認すると、
その安堵からか自然と重なる手と手、
会話のたびにぶつかる視線、
その度に胸は高鳴る。
お互いがお互いを感じている。
お互いがお互いだけを見つめている。
「好き」
湧き出す感情、
「次に会う時まで」だなんて言ったけれど、
「会っているうち」にもう「好き」になってしまった。
だけれども、そのことを伝えるのは「次に会ってから」にしよう。
別れた後も冗談混じりのメッセージを送りあいながら気持ちを深める。
「次に会う時」を楽しみにして、毎日やり取りを続けていた。
ところが、次第に鈍るレスポンス、
3日空いた返事に一言だけ書かれていた「ごめんなさい」
それから彼女と会うことは二度となかった。
「あの雰囲気で?マジか!!」
そこから彼は女性を信じられなくなりましたとさ。
おしまい。
※似たようなことはありましたがフィクションです。