「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』最終作を見て感じたこと

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まず初めに私のエヴァに対する「立ち位置」から書きたい。

私はエヴァ信者ではないが、一時代を築いたアニメ作品としてエヴァを追い続けてきた。

 

テレビアニメ版はだいぶ後追いで全話を見て、旧劇場版も見た。

新劇場版は最新作を含めてすべてAmazonプライムで見た。

NHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル』で庵野監督の特集は見た。

漫画はすべて読んでおらず、途中で止まっている。

 

設定の深さやこだわり、

「ATフィールド」や「人類補完計画」という、

意味を知れば、なんとも哲学的な用語に魅せられて感銘を受けてきた。

 

作者の世界観を余すことなく「映像作品」としてアウトプットしている。

「心からの叫び」で「受け手」の心を震わせて、

もて余すほどの「解釈の広さ」という津波で「受け手」を飲み込む。

それぞれの「エヴァンゲリオン」が「受け手」の心に打ちたてられる。

 

その意味で、間違いなく『エヴァンゲリオン』は傑作だ。

 

私は『エヴァンゲリオン』をそう思っている。

いわば立ち位置は「ライト層のファン」と言うところだろうか。

 

さて、賛否入り混じる「最新作」にして「最終作」

一言で評するならば「ようやく解放されたのだな」という感想が浮かぶ。

 

NHK『プロフェッショナル』の印象に引きずられているのは間違いないが、

庵野監督は「命を削るようにして」この作品を作り上げてきたのだ。

 

「自分が面白いと思うもの」

そこに対して妥協のできない不器用なクリエイター、

 

何度も「次で最後」と宣言しながら新作を発表する、

そんな宮崎駿監督にしてもそうだけれども「作らずには生きてはいけない人」なのだろう。

 

庵野監督の言葉を借りれば、

「自分が社会に対して貢献できることはこれしかない。だから作品を作る」

「(NHKの番組名である)プロフェッショナルというタイトルがあまり好きではない」

そういうことを述べていた。

 

「生きることが作ること」

 

だけれども、商売であるからには締め切りがあり、順序がある。

折り合いをつけることが苦手な中で、なんとかそこに折り合いをつけながらも、

できる限り命を削りつつ作品を完成に導いた。

 

「作品に対する責任」

「社会に対する責任」

 

この作品はそういうものの塊なのだろう。

だからそれまでの「トゲトゲしたエヴァンゲリオン」ではなく、

どこか「優しいエヴァンゲリオン」だった。

 

前にこういう記事を書いた。

tureture30.hatenadiary.jp

 

ある意味では庵野監督の中で「エヴァンゲリオン」に対して折り合いをつけて、

「人間賛歌」的な味付けをして有終の美を飾ったのが本作なのかもしれない。 

 

主人公である「碇シンジ」とともに庵野監督も大人になった。

苦しみながらも、こだわりを詰め込みながらも、

生み出した責任から作品をどこかに着地させなければならない。

そんな責任感の中で完成した作品のように思う。

 

本作品は4部作の4作目、

3作目からは実に9年の歳月をかけて制作した。

 

ここまで期間が開いた裏では、

庵野監督が3作目を公開した後に「うつ病」を発症したことがあったようだ。

 

1年以上もスタジオに足を運ぶことができなくなり、

そこから徐々に制作への足掛かりを得ていく。

 

2013年にはジブリの『風立ちぬ』で声優デビューという異例の抜擢、

これには宮崎駿監督の「(庵野は)現代で一番傷つきながら生きている」という、

主人公の人物像に重なるという意向に加えて、

「復帰へのきっかけを与えたい」という鈴木敏夫プロデューサーの配慮があったようだ。

 

そこからまた意欲を燃やしてエヴァ作りにのめりこむ。

庵野氏曰く「エヴァ」以外のアニメを作ろうとしても「エヴァのセルフオマージュ」になる。

それほど「自分が面白いと思うものがすべてエヴァにはつまっている」

庵野監督にとって「エヴァンゲリオン」は特別なのだ。

 

だから、そういう苦しい期間を乗り越えても、エヴァに対するこだわりは変わらない。

 

何度も台本を作り直したり、とことんアングルにこだわる中で、形になっていた計画をひっくり返す。

 

締切のことを何度も口にしながらも、制作陣に「過去最高クラスでヤバい現場」と言わしめる庵野監督の姿は、傍から見たら理解に苦しむほどだろう。

 

それでも「信頼」があるからスタッフはついてくる。

最後はスタッフ一人一人が涙して作品を視聴して「作って良かった」と互いに手を取る。

 

『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』とはそういう作品なのだ。

 

この記事を書き始めて、

どう筆を進めていくのか自分でもわからずにここまで書いたが、

正直言って、ここまで作品の中身について述べる気は起こらない。

 

庵野監督やスタッフが命を削って「作って良かった」と思って世に出した作品、

そしてそのこだわりは作品の随所から伝わってくる。

そんな「素晴らしい作品」

それが私の感想だ。

 

正直、最後にシンジと手を取り進むキャラクターが「あの子」であることには違和感しかない。

だけれども、これは「シンジの物語」ではなく「庵野秀明の物語」なのだ。

おそらく「あの子」は奥様である安野モヨコさんをモチーフにしているのだろう。

多くの方が考察しているけれど、そういうことでなければ説明がつかない。

 

「けじめをつけたんだな」って、

その一言に尽きる。

 

本作はそれまでの3部作とは全くの別物で、

むしろNHK『プロフェッショナル』の続編と言ってもいいかもしれない。

 

アニメ作品でありながら監督のドキュメンタリー、

そういう見方をすべき作品なのかもしれない。

 

ひとまず庵野監督は次回作に向けて意欲的に動き始めているようだ。

最愛の伴侶とともに手を取り作品を作り続けるのだろう。

 

エヴァのラストシーンの続きはおそらく、

庵野監督自身がリアルで紡いでいくのだ。

 

「25年間お疲れさまでした」

それしか言いようがない。