「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

白い息

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見えなかった。

だけれども、確かに呼吸をしていた。

 

外気と吐息との寒暖差、

それにより私は私の呼吸を目にすることができる。

 

頭で理解していただけのことが、

ふと、目の前に現れる。

 

それは、当たり前だと思っていたことが、

実は多くの努力に支えられていたことを知る感覚に似ている。

 

これまで必死に生きてきたと思い込んでいても、

もしかしたら周りも同じように生きてきたのかもしれない。

 

それは個人の実感だから、

単純に比較することはできないけれど、

人はどこかで「自分は特別だ」と思い込んでいる節がある。

 

「アンコンシャスバイアス」

 

それがなければ人生は破綻する。

だから、すべてを否定するつもりはないけれど、

もっと、適切に比較相対する能力を身につけたい。

 

攻殻機動隊』のように、

人はネットワークにつながることでその能力を得るのだろうか。

 

これから先の未来は、

「人」という存在はより観念的になるのかもしれない。

 

確かに存在する。

だけれども目には見えない。

 

そういう観念的なものが力を持つ時代、

 

合理的になればなるほど、

スピリチュアルへと回帰していく。

 

「自意識」は肥大化していく一方だから、

「肉体」という箱では手狭になっていく。

 

そうやって「解放」を求めて、

観念的なものに惹かれていくのだ。

 

口を尖らせて「ふぅ」と吐いた息は白くならない。

「ほっ」と一息ついた息は白くなる。

 

そこに人間という存在の「隙」を感じて、

少しだけ心躍る。

 

肩の力を抜いたその瞬間、

そこに「実存」がある。

 

鎧を着こんで、仮面をかぶって、

外向きの装いばかりを綺麗にしたところで、

吐く息は白くならないのだ。

 

目に見えないもの、

目に見えるもの、

 

それぞれに魅力はあるけれど、

目に見えるほうが安心できる。

 

これから先しばらくは、私は私の息を見て、

「自分は確かに呼吸をしている」と、

そう実感するのかもしれない。

 

寒くなってきた。

冬が近づいている。