何とも単純なものだ。
ボロボロだった私の男としての自尊心は、
こんなにも簡単に修復されるものなのだ。
たった一日だけ、
彼女と手を繋いで過ごしただけで、
こんなにも心は満たされる。
どんなに高価なエナジードリンクを飲むよりも、
やる気と活力に満ち溢れてくるのだ。
「触れ合い」による科学的効果も証明されていたはずだ。
ペットや家族、友人や恋人とのスキンシップは、
オキシトシンを分泌させると聞いたことがある。
私にとっては、相手が女性だということが大きい。
それも好意を寄せる相手だ。
ただ、少しの間手を繋いでいただけなのに、
こんなにも心が満たされるとは思わなかった。
この気持ちは時とともに失われていくのだろうか。
いくつになっても、手を繋いで一緒に出掛けるような夫婦でありたい。
やはり私はロマンチストなのだ。
だけれども、そう思うものは仕方がない。
それが偽ることのない私の気持ちなのだから。
さて、だいぶ彼女の態度が変わってきた。
彼女の言い分では、私の真っ直ぐな言葉に胸を打たれてドキドキしてしまうらしい。
本当に素直でわかりやすい。
そして言葉にもしてくれる。
そういうところが可愛い。
私から見た彼女の印象もだいぶ変わってきた。
初めはどちらかと言えば、なんでも自分でこなしてしまうような印象だったけれど、意外と甘えん坊なところがあるようだ。
そして、甘えられることも好き。
そんなところまで私と似ている。
彼女の纏っていた神秘のヴェール。
そこから覗く彼女の素顔に対して、私は少し臆病になっていたのかもしれない。
だけれども、なんのことはない。
その素顔は、私が思っていたよりもずっと、私に似ていた。
ここまで価値観や考え方の同じ人と出会うことのできる機会はない。
お互いがお互いの欲しい言葉や行動が、手に取るようにわかるのだ。
一緒に生活をすることになったならば、また彼女の知らなかった一面に怯えることになるのだろうか。
いや、それもまた、私にとって心地良い変化となるはずだ。
根底にあるものを共有できている。
枝葉は彼女に振り回されたところで、私は痛くも痒くもない。
そして、お互いがお互いに喜んでもらいたいと努力し続けている。
「お互いのために頑張ることができる」
この関係が崩れない限りは、私たちはきっと大丈夫なのだろう。
そう確信する。