「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

「家族」として接してくれる

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「ますをくんは、私にとって、もう家族だから」

ふと、彼女がそう言った。

 

彼女からしたら、

私はすでに「家族」と同じ扱いらしい。

 

もう少し恋人気分を味わいたい気持ちがあったものだから、それはそれで寂しい気がするけれど、

その言葉を聞いて、私も彼女のことを「家族」として見ようと思った。

 

経済的な面では「どうせ結婚するのだから同じ」と、デート費用のほぼ全てを私が払っていた。

だけれども、心理的な面では、私はまだ彼女のことを「家族」として見ることはできていなかった。

 

彼女の一言は、それを私に気づかせてくれた。

 

これから先、一緒に生活することになる。

そのことを漠然とは意識していたけれど、深く考えてみると、あまり実感は湧かない。

改めて、気持ちを深めていく必要があるのだろう。

 

その辺りの覚悟は女性の方が強い。

そして現実的だ。

 

彼女からしたら、私を逃すわけにはいかないのだろう。

そんな強い意志を感じる。

 

かと言って、結婚相手という割り切った関係ではない。

時には彼女の方からベタベタくっついてきたり、

「私の心はますをくんに落とされた」だなんて、

会話の最中にドキッとする一言を混ぜてくる。

 

それも私を逃さないための計算かどうかは知らないけれど、

彼女が意外と尽くすタイプで、私に尽くしたいと思っていることは、その言葉や行動の端々から感じ取ることができる。

 

「恋愛は、美しい誤解であり、結婚は、惨めな理解」

そんなことを言っていた人がいたけれど、今の私たちはまだ、お互いの素敵なところばかりを見ているのだろう。

 

一緒に生活を始めたら、嫌でもこれまでに見えなかったところが見えてくる。

それでも、先に進むという選択をしたからには、擦り合わせをしながら、共に生きていくことになる。

 

今は「誤解」に身を任せながら、とにかく先に進むしかないのかもしれない。

あとのことは、先になってみないとわからないのだ。

 

彼女は私から見て、少し舞い上がっている様子。

逆に私の方は、だいぶ客観的だ。

 

クールで聡明なイメージだった、初対面の彼女はどこへ行ったのだろう。

それほど、女性にとっての結婚は大きなイベントなのだろう。

 

そして、彼女はその相手として、私のことを選んでくれている。

少しばかり、私の方がマリッジブルーに包まれているけれど、嬉しそうな彼女の姿を見るたびに、このままでは申し訳ないなと思う。

 

どんどん外堀は埋まっていく。

私が彼女を攻略していたはずなのに、気がつくと私の方が攻略されようとしているようだ。

 

やはり、私の彼女は聡明なのかもしれない。

私はいつも女性から搾取される側なのだ。

 

だけれども、彼女からは確かな思いやりを感じる。

そろそろ攻略される頃合いなのだろう。

 

ここらで城門を開いて、私は彼女の存在を通して、

「女性たち」との和睦を結ぶことになる。

 

長きにわたる、私と女性たちとの戦争は、

もう少しで終わりを告げるのだ。

 

「もう恋愛のことで悩まなくていい」

彼女と家族になることで、私は解放されるのだ。