この作品は、過去に漫画版を一度記事にしたことがある。
本年映画化されて話題になった作品。
ずっと気になっていたが、なんと早くにAmazonプライムで視聴できるということだったので、早速視聴した。
改めて映画で見てタイトル「ルックバック」の意味を噛み締めた。
「背中を見て(ルックバック)」
改めて映像で確認して、漫画だけでは気が付かなかった部分に気がつく。
作品の中には、そのメッセージが幾重にも織り込まれているのだ。
〜あらすじ〜
小学校の学級新聞に掲載する4コマ漫画をきっかけに友情を結んだ2人の少女、藤野と京本。
一つの漫画を作り上げるという挑戦から絆を深めるが、高校卒業のタイミングで分岐点を迎える。
それぞれの道を進む二人の間を切り裂くような事件が起こる。
「もしもあの時、自分が誘っていなかったら」
「もしも」の世界と現実世界が繋がった先で奇跡が起こる。
---
藤野の背中を見て、一歩を踏み出した京本。
そして「背中を見て」という4コマ漫画をきっかけに、京本の背中に書いた自分のサインを見て、再び一歩を踏み出す藤野。
ラストのシーンに込められたメッセージ。
原作者の藤本タツキ氏はつくづく天才だと思う。
そして、その原作の意図を忠実に映像化したスタッフにも脱帽だ。
短い作品ながらも、素晴らしい出来栄えに仕上がっている。
絶望した状況に追い込まれて、状況は変わらないけれども、自身の心が変わることで、そこに救いが生み出される。
そこに産まれたカタルシスを見事に操って、読者の心にスッと心地よい風を送り込んでくれる。
そんな著者のメッセージを忠実に映像化していた。
人生なんて、いつ、どうなるかわからない。
それでも人は前に進むのだ。
手に入れられるかわからないものを追い求めて、仮に求めていたものが手に入らなかったとしても、別の何かを手にして満足する。
それは決して妥協なんて安易なものではない。
どのような未来が待ち受けていたとしても、自分で選んだ選択肢の先にある人生に、私たちは責任を取り続けなければならない。
「もしも、あの時に別の選択をしていたら」
そう思うことは山ほどあるだろう。
それは、今だからそう振り返ることができるだけで、当時の自分は今の選択肢しか選ぶことができなかったのだ。
幾つもパラレルワールドが広がっているというのは、錯覚に過ぎない。
「もしも」はいつまで経っても「もしも」のまま。
それをのちの人生に活かすことはできたとしても、それ自体が変わることなど決してないのだから。