
少し前に『めぞん一刻』がどうしても読みたくなったから、中古で全15巻を大人買いをした。
こういう買い方は私としては非常に珍しい。
それほどまでに読みたかったのだ。
そこから2ヶ月ほどかけてゆっくりと、このほど読み終わった。
評判通り、間違いのない名作だ。
これは買って良かった。手元に置いて何度も読みたくなる作品だ。
アニメは、テレビで最高視聴率22%を叩き出したほど人気だったようだ。
昭和の古き良き時代。そこから滲み出る心地よさに「ほっこり」させられる。
今よりも「結婚」が人生に必須の選択肢とされていた時代。女性は結婚をするのが当たり前だという価値観がオブラートに包まれずに語られている。
だからこそ「女性の強かさ」の質が今の作品とは違う。それがまた心地よく感じるのだ。
「女ってダメね」
寂しさを埋めるために男を利用しようとする心の動きを押し留めながら、そう赤裸々に語るヒロインの姿に心を打たれる。
この作品の謳い文句は「永遠の恋愛バイブル」
一途な思いを貫き通した青年の一途さに、徐々に凍りついた心を溶かされていく未亡人の女性。
不器用な二人の距離が縮まりそうで縮まらない。
縮まったと思ったら、すれ違いから距離が離れていく。
それでも確かに二人の心は繋がっているはずなのに、決定的な一言が出てこない。
そのもどかしさが作品の醍醐味だ。
そしてついに結ばれた時に、
「実はずっと前から好きだったの」と、その一言にノックアウトされた読者は数知れないだろう。
携帯電話の存在しない世界。
恋人同士のやり取りは、アパートの共用黒電話を介して行われる。
だからこそ生まれる行き違いやロマンス。
電話がなるたびに新たなドラマが起こるのだ。
恋愛ドラマだから、色んなロマンスが設定されている。どちらかが少しでも違う選択をしていたら、違う結末を迎えていた。
しかし、終わりまで読んでみると、その一つ一つの選択肢がしっかりと伏線になっているのだ。
ここでこういう選択をしたからこそ、心がこちらに傾いて、最後の選択へと向かっている。
そういう微妙な心の動きを緻密に描いている。
全て狙っているのであれば、驚嘆に値するほどの構成力だ。
半ば出来レースのような王道の展開を、これだけ読者に飽きさせることなく単行本15巻分も描き切れるのだからすごい。
一話一話に「ほっこり要素」が織り込まれていて、登場人物に感情移入してしまう。
高橋留美子先生は、週刊連載を何十年も続けていて、その全ての連載作品が映像化しているという奇跡の作家。
この人間の感情を緻密に描く力が、世代を超えてヒット作を生み出し続けているのだろう。
この作品を読むことができてよかった。
素直にそう思える名作だ。