
魚豊『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』。
陰謀論に踊らされる人の心理描写を見事に描いた作品だ。
人は、「自分に価値があると思えない」と生きてはいけない。
だから、陰謀論に踊らされてしまうのだ。
陰謀論。
世界を裏で操っている奴がいる。
だから自分は報われないし、世の中の多くがその存在を知らないのに自分は知っている。
そいつらの陰謀を打ち砕くために自分は行動を起こしている。
だから自分には価値がある。
そうやって架空の何かを自分よりも下に置くことで、自分に価値があると思い込もうとする。
何をやってもうまくいかないから、うまくいかない理由を作り出すために、架空の何かを敵とみなして攻撃することで生きている実感を得ようとする。
下の下の自尊心の満たし方。
誰かの価値を下げることで、相対的に自分の価値を上げようとする、なんともお手軽に自尊心を満たすことのできる行為。
リアルと向き合って、汗水流して生活を良くしようとまともに生きている人間からすれば、それを向けられて損失を被ることは、なんとも傍迷惑な話だ。
それが癖になってしまうとさ。
そういう生き方しかできなくなるよ。
結局、自分が変わるしかないのだ。
どこかで必ずリアルと向き合わなければならない時が来る。
その時を迎えた時に立ち向かうだけの力量を身につけてきたのか、それともお手軽な方法に逃げてきたのか。
それまでの生き様によって対処は大きく変わってくるのだ。
「自分の人生がうまくいかないのは自分のせい」
結局のところ、そういうことなのだ。
誰かのせいにしたところで何も変わらない。
一時はしがみつく先があって、それで救われたような気持ちになるかもしれない。
しかし、それだけのことなのだ。
人生風まかせ。
うまくいかなければ誰かのせい。
信じていたのに裏切られた。
なんとも惨めな人生を歩んでいる人。
そういう短絡的な人が世界的に増えているのかもしれない。
今の時代は、情報で溢れかえる時代だから、正しい情報を取捨選択することが難しい。
だからこそ、ファクトベースで真実を見極める力が何よりも大事になる。
まぁ、失敗しなければわからないことは多い。
一時は騙されて、そこから学ぶことができるならばそれで良いのかもしれない。
人生は長いのだ。
その間、何度も変わることができる。
そのチャンスを逃してはならない。
失敗から学ぶことのできない人は、
もはや救いようがないのだから。