私は「マスオさん」のことを尊敬している。
妻であるサザエさんの実家で、相手の両親や兄弟と共に住み、相手の家族への配慮も去ることながら、良き夫であり、良き父である。
早稲田大卒の商社マン、
原作では32歳、アニメでは不明らしいが、この歳ならば働き盛りで仕事も忙しいことだろう。
それなのに、自己主張が強いわけでもなく、常に優しく周りへの気配りを忘れない。
こんなに人間のできた人はいない。
意外なことに原作漫画では、アニメのマスオさんとは違い、トリッキーな性質の持ち主とのことだが、それは置いておこう。
結婚式に向けて歩みを進める中で、イライラすることが増えてきた。
妻の親の介入があまりにも多いのだ。
妻も半ば諦めたように、それを受け入れる。
決まったことが直前で変更となったり、予定していなかったオプションがどんどん増えてくる。
そのたびに、私たちは右往左往してストレスが溜まる。
妻からすれば「いつものこと」
めんどくなりながらも、これまでもそのほとんどを受け入れて生きてきたのだろう。
「親がこうした方がいいと言っている」と、私が知らずのうちに決まっていることも多い。
それを決定事項として伝えられ、対応を迫られる。
そのことで意見が衝突することも増えてきた。
そうなると、うちの親も黙ってはいない。
私を介して両家の意見が飛び交う中で、それを取捨選択した折衷案を模索するだけで大きな労力を伴う。
これから先もずっと、同じようなことが続くのだろうか。
はじめは「角が立つと良くない」と思い、言われるがままにしてきたけれど、そろそろ釘を刺しておかないと、これからも同じようなことになりかねない。
「誰の結婚式なのか」
それをはっきりとさせる必要がある。
妻に対して一度しっかりと話したら、向こうの親に伝わったらしく、それはそれで今度はかなり気を使われるようになった。
元々は他人同士だから、もちろん考え方が違う部分は多い。
それは致し方のないこと。
だけれども、これから先は二人で生きていくことになるのだ。
もちろん助けてもらう部分はあるだろうけれど、基本的には二人で家庭を築いて、家庭内のことは自分たちで解決していかなければならない。
そのことだけは忘れてはならない。
私は「マスオさん」にはなれない。
向こうの家族と一つ屋根の下で住むことになったならば、おそらく逃げ出すのではないだろうか。
核家族化が進む前の昭和の家族像は、磯野家のようなものだったのだろうか。
それならば、人との結びつきが強いことも納得できる。
詰まるところ、今はパーソナリティの肥大化した時代なのだ。
家族であったとしても、夫婦であったとしても、自分だけの時間や領域は必要となる。
私と妻は、家族だけれども他人。
そこの距離感はしっかりと保つ必要があるのだろう。
結婚して間も無く、こんなことを考えている私は、これから先の結婚生活を、うまくやっていくことができるのだろうか。
それとも、早いうちに「割り切ることの大切さ」を実感したことで、結婚生活に変な期待をしなくても良くなった分、快適に過ごせるのだろうか。
これから先は長い。
私たちはまだ、はじめの一歩を踏み出したばかりなのだ。
どれだけの距離があるのかはわからないけれど、今のところ、辺りはまだ霧に包まれており、先の様子を伺うことはできない。
これから先、たくさんのエピソードが私たちを待ち受けているのだろう。