「暑さ」は鳴りを潜めて、
「肌寒さ」を感じる時間帯が増えていく。
さすがに日中は汗ばむことが多いけれど、
その時間も徐々に削られていくことになるだろう。
去年の今頃、
コロナ禍の合間を縫うように、
友人と焼き肉を食べに行った。
当時、これもまた合間を縫うように、
「1か月限定」と再開したマッチングアプリ、
友人との焼肉に満足した帰り路で気がつく。
私のプロフィールを見た女性から「いいね」の通知が届いていた。
相手のプロフを確認してみると、
10個も年下の女性だった。
かなりの年下で向こうからのアプローチ、
あまりないことなので期待はせずにメッセージを送ると、
数日後に早速通話をすることになった。
緊張気味の声から伝わる誠実さ、
読書好きな彼女とはすぐに意気投合した。
初めてのデートはお互いどこかぎこちなく、
印象としては「うまくいかなかったな」と感じたけれど、
彼女のほうは楽しむことができたらしかった。
それから何度かデートを重ねた。
会うたびにどんどん気温は下がっていく。
羽織るものは厚さを増していくけれど、
二人の距離は少しずつ縮まっていった。
並んで歩くと会話は弾むけれど、
向かい合うとぎこちなさが目立つ、
そんなところに違和感を感じながらも、
「今日は疲れていたのかな?」という私のメッセージが、
「疲れていたわけではないのに楽しそうに見えなかった」と彼女に捉えられ、
そこから一度関係は途切れてしまった。
その後しばらくして、
不意に彼女からメッセージが届く。
そこからもう一度やり取りを続けるようになったけれど、
結局はコロナに阻まれて、
何度も約束を先延ばしするうちに関係は終わってしまった。
秋口に始まって、
最後のメッセージは春の訪れ、
およそ半年間、
「寒さ」とともにやってきて、
「寒さ」とともに彼女は私の前から消えていった。
振り返るとちょうど一年前、
10個年下ということもあるけれど、
今まであまり接したことのないタイプの女性だった。
Mr.Children『くるみ』で歌われるけれど、
掛け違えてしまったボタン、
そこまでは仕方のないことだけれども、
持て余したボタンホールに、私は意味を見出すことができなかった。
もしも、すれ違ってからも、
もっと熱烈にアプローチをしていたら、
結果は違うものになったのかもしれない。
これもまた、ほんの些細なすれ違いからうまくいかなかった、
私の傷として残る「女性たちとの思い出」の一つだ。
これを最後にロマンスは生じていない。
あれから1年が経つのだな。
「恋愛」
私はこっちの方向と向き合うことをあきらめて、
「転職」という違う方向に挑戦の道を見出した。
おそらく、ボタンを掛け違えていなければ、
持て余したボタンホールに意味を見出すことができていれば、
今頃はまだ彼女との関係を探る形で、
「恋愛」と向き合いながら生きていたのかもしれない。
私は挑戦しているようで、
「恋愛」から逃げたのだ。
徐々に増していく肌寒さ、
深々と心の温度を奪っていく。
その寒さに耐えながら、
一日一日を踏みしめていく。
その歩みに責任をもって進んでいく。
私にできることはそれしかない。