「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

窓越しに見える女性

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どこか誰なのかも知らない。

ただ毎日窓越しに眺めている。

 

私の職場の隣のビル。

そこで働く女性の姿。

私の席からは彼女の席が見える。

 

何気なく眺めていると、

その仕草に心惹きつけられるものを感じる。

彼女の日常を「覗き見」しているような、

そんな感覚が私の心を掴むのだろうか。

 

おそらく向こうは気がついていない。

だからこそ、そこに背徳感を覚えるのかもしれない。

 

一日を振り返ると、私は実に多くの人たちと空間を共にする。

ほとんど素性も知らずに同じ部屋で働く人もいる。

電車や駅ですれ違うだけの人もいる。

 

その一人一人に人生があるのだ。

そう考えると、誰もが漏れなく幸せになれば良いのにと思う。

人は「社会」に支配されてしまった。

 

およそ関わりのない人を、

人とも思わないことに慣れてしまった。

あまりにも多くの人とすれ違うことに慣れてしまった。

心を通わせないことが当たり前になってしまった。

 

果たして人類は進化しているのだろうか。

前進することで失うものは、

あまりにも大きいのではないだろうか。

 

集団で生活し、集合知を武器に厳しい時代を生き延びてきた私たちホモ・サピエンス

 

人との繋がりを大切にすることで生き延びてきたはずなのに、今や繋がりが多すぎて逆に人を無機物と捉えることで心を自衛している。

 

どこか不健全だ。

局所的に人が集まりすぎることは、

どこか不健全だと感じるのは私だけだろうか。

 

人類にとって、

「自由」とは何を意味する言葉なのか。

 

「窓越しに見える女性」

私はその女性のことを知らない。

そして、これから先、接点を持つ確率はゼロに等しい。

 

毎日眺めながらも、

私は永久にその女性のことを知らないのだ。