心が柔らかいから形が変わりやすい。
若い頃に受けた傷は癒えたように見えても、
見えないところで疼くのだ。
「死にたい」と思うようなこともあるだろう。
「消えてしまいたい」と思うことは何度もある。
そうやってたくさんの傷を作っていくうちに、
傷の痛みに鈍感になっていくのだ。
やがて、多少の傷では痛みを感じなくなる。
ちょっとやそっとでは心が震えなくなる。
心が動かなくなると動機を失い、
手足も動かさなくなっていくのだ。
「創造的人生の限界は10年」
芸術とは、作者の内面にあるものを形に表すもの。
作者の中に形として表したいものがなければ、それを生み出すことはできない。
ビジネスのために無理やり生み出したとしても、多くの場合、それは別の人に響くことはない。
芸術を生み出すためには、常に心を震わせて、形にしたいものを持ち続けなければならない。
心が動かなくなったならば、過去の遺産で勝負するしかない。
若い頃に心を震わせた経験を思い出して、それをツギハギで形にする。
世の中の多くの芸術家は、そうやって作品を打ち出し続けているのだろう。
宮崎駿監督自身も、それを痛感しているからこそ、映画のセリフとして言わせたのだ。
そう考えると、若い頃の傷は悪いものではない。
むしろ、いかに傷を集めたかで、人生の豊かさが決まると言っても過言ではない。
痛みを乗り越えた先に、後から振り返ると「いい思い出」だと思える時が必ずやってくる。
今はこの世の終わりだと思うほど落胆していたとしても、この世は簡単には終わってなどくれないのだ。
私も精神的と身体的に一度ずつ死にかけて、ここまで辿り着いた。
今は今で大変だけれども、客観的に見ると「幸せ」を絵に描いたような状況のようだ。
人生とはそういうもの。
当事者である時には気が付かない。
後から振り返った時に、苦労や苦悩や痛みが絶品のスパイスに変わる。
生きてみないとわからない。
生き続けて、後になってみないと、
今の苦労にどんな意味があるのかなど、
わからないのだ。
必ず意味はある。
そう思えるのが人生だ。
前向きに生きていればいい。