「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

わざわざ扉なんかつけてさ

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自分の心の中にある、

自分の殻に閉じこもるためだけの場所なんだから、

扉なんていらないはずなのに、

 

誰かに気がついて欲しいからって、

わざわざそんな場所に扉なんかつけてさ。


膝を抱えて孤独に浸っているけれど、

その耳はいつだってノックの音を待っている。


「ほっといてくれ」

 

いくらそう思い込んだって、

誰かに気がついて欲しいくせに、

 

「私はこんなに辛くて苦しいんだよ」

 

それを伝える相手を待って、

わざわざ扉なんかつけてさ。


誰かと分かり合いたいから、

自分の辛さや苦しみを知って欲しいから、

だからわざわざ扉なんかつけたんでしょ?


「素直になれない」


いつもちゃんとしていないと、

舐められないようにしないと、

弱い自分をバレないようにしないとって、

そんなことばかりにこだわって、

 

だけれども、

弱い部分をさらけ出すから、

人は安心するもの、

 

強いところばかり見せていたら、

「自分も弱さを見せられないな」って、

「自分もちゃんとしていないとな」って、

それが相手の重荷になってしまう。


ちゃんとしていなくたっていい。


弱くたって、

みっともなくたって、

白い恋人を抱えながら号泣したっていい。


「その弱さが自分自身」


それを認めてあげること、


情けなくて、惨めで、

自分に優しくしてくれる人しか好きになれなくて、

いつも損ばかりして、

 

それでも自分だけは自分を裏切らないこと、

そんな自分の一番のファンになってあげること、


自分を認めてあげられたならば、

世界には自分を見捨てない人が最低でも一人はいるってこと、

それも、いつでも一緒にいてくれる最強の味方が、


あなたの好きなあなたを好きになってくれる人、


そんな人が目の前に現れたならば、

あなたはあなたの好きなあなたの魅力を、

たくさん伝えてあげればいい。


一番のファンならば、

容易いことでしょ。


そうやって、

扉の外に出かける機会が増えていって、

部屋はたくさんのお土産で埋まっていって、


手狭になったならば、

二人で住める場所に引っ越して、

三人、四人と幸せは増えていって、


そうやって世界は広がっていく。

そうやって分かり合えるようになっていく。


ノックの音に耳をすます前に、

誰かの扉をノックしに行こう。


その誰かだってきっと、

ノックの音を待ちわびているはずだから、

 

誰だって自分だけの居場所を持っている。

 

だけれども誰だって、

わざわざ扉なんかつけて、

ノックの音に耳をすましている。

 

「雫、好きだ。結婚しよう。」

 

耳をすませば

扉の先からはそんな素敵な告白が、

聞こえてくるかもしれない。

 

世界は想像も及ばないくらいに、

遠く遠く広がっているのだ。