自分の心の中にある、
自分の殻に閉じこもるためだけの場所なんだから、
扉なんていらないはずなのに、
誰かに気がついて欲しいからって、
わざわざそんな場所に扉なんかつけてさ。
膝を抱えて孤独に浸っているけれど、
その耳はいつだってノックの音を待っている。
「ほっといてくれ」
いくらそう思い込んだって、
誰かに気がついて欲しいくせに、
「私はこんなに辛くて苦しいんだよ」
それを伝える相手を待って、
わざわざ扉なんかつけてさ。
誰かと分かり合いたいから、
自分の辛さや苦しみを知って欲しいから、
だからわざわざ扉なんかつけたんでしょ?
「素直になれない」
いつもちゃんとしていないと、
舐められないようにしないと、
弱い自分をバレないようにしないとって、
そんなことばかりにこだわって、
だけれども、
弱い部分をさらけ出すから、
人は安心するもの、
強いところばかり見せていたら、
「自分も弱さを見せられないな」って、
「自分もちゃんとしていないとな」って、
それが相手の重荷になってしまう。
ちゃんとしていなくたっていい。
弱くたって、
みっともなくたって、
白い恋人を抱えながら号泣したっていい。
「その弱さが自分自身」
それを認めてあげること、
情けなくて、惨めで、
自分に優しくしてくれる人しか好きになれなくて、
いつも損ばかりして、
それでも自分だけは自分を裏切らないこと、
そんな自分の一番のファンになってあげること、
自分を認めてあげられたならば、
世界には自分を見捨てない人が最低でも一人はいるってこと、
それも、いつでも一緒にいてくれる最強の味方が、
あなたの好きなあなたを好きになってくれる人、
そんな人が目の前に現れたならば、
あなたはあなたの好きなあなたの魅力を、
たくさん伝えてあげればいい。
一番のファンならば、
容易いことでしょ。
そうやって、
扉の外に出かける機会が増えていって、
部屋はたくさんのお土産で埋まっていって、
手狭になったならば、
二人で住める場所に引っ越して、
三人、四人と幸せは増えていって、
そうやって世界は広がっていく。
そうやって分かり合えるようになっていく。
ノックの音に耳をすます前に、
誰かの扉をノックしに行こう。
その誰かだってきっと、
ノックの音を待ちわびているはずだから、
誰だって自分だけの居場所を持っている。
だけれども誰だって、
わざわざ扉なんかつけて、
ノックの音に耳をすましている。
「雫、好きだ。結婚しよう。」
扉の先からはそんな素敵な告白が、
聞こえてくるかもしれない。
世界は想像も及ばないくらいに、
遠く遠く広がっているのだ。