背中に穴の空いた、
私の形をした動かない物体。
それを外から眺めているような感覚。
どこか客観的に過去の自分に思いを馳せては、
懐かしいやら寂しいやら、
複雑な気持ちが去来する。
まだ道は途中なのだけれども、
どこか満たされている感覚。
そこに甘んじてゴールまで辿り着けない経験は、
嫌というほどしてきたはずなのに。
脱力感が強い。
単純に忙しく疲れているということもあるけれど、
少し肩の荷が降りたような感覚はある。
男としてのステータスは変わらない。
彼女との関係。
何かが先に進んだわけではない。
それでも感じる脱力感。
私は今まで何を背負っていたのだろう。
意固地になって、
弱者男性としてのプライドを盾にして、
自分が何者かであるために、
必死で戦っていたのかもしれない。
私は先へと進んでいく。
時と共に感情は風化していくのだろうか。
過去の私を振り返り、
なんとも思わなくなった私は、
果たして私のままでいられるのだろうか。
今はそこに未練はない。
抜け殻を前にしても、
ただ物悲しく思うばかりだ。
この感情すら消え去った時に、
私は、長いこと在籍した「弱者男性」に共感できるのだろうか。
とはいえ、来月には元鞘に戻っている可能性もある。
考えるだけ無駄なことなのかもしれない。
「脱け殻」がそこにある。
私の目の前にある。
触ってみるとまだ温かい。
だけれどもその温もりは、
私の心には伝わってこない。
私は過去の私に興味がなくなってしまったのだろうか。
それはそれで寂しい気がする。
ほんの少しだけ。