少し反省した。
平日の仕事終わりに会った日のことだ。
疲れが溜まっていたこともあり、
少し理性のタガが外れていたため、
私は彼女に対して、ものすごく甘えた態度で接してしまった。
私だけが飲酒していたこともあった。
「自分の弱さ」を思いっきりぶちまけながら、
彼女に体を預けて、心を預けすぎて、
少し彼女を困らせてしまった。
「今日のますをくんは、疲れているみたいだね」
そう言って優しく受け止めてはくれたけれども、
いつもは「頼りがいのある男」を演出している私の、
いつもとは違う姿に困惑している様子だった。
手を繋ぎながら歩く私の腕には、
彼女の胸の感触が伝わってくる。
私はいつも以上に、その感触を意識してしまい、
「冷静な様子の彼女」に気が付くことなく体を引き寄せる。
「このタイミングではなかったのだな」
そう気が付いたときには遅かった。
「外でイチャイチャしすぎだ」と言わんばかりに、
うつむく彼女に「ごめん」と告げて、
私は彼女の肩から手を放した。
そこからは少しご機嫌斜めな様子。
手を繋ぎながら歩くものの、
彼女から私に体を預けてくれることはなかった。
お互いがほろ酔いだった日には、
その日以上に外でイチャイチャしていたこともあった。
だけれども、その日は私だけが舞い上がっていたようだ。
気を付けなければならない。
彼女は、私を慰めてくれる道具ではないのだ。
その日の私の態度は、
彼女が「甘えさせてくれること」が当たり前のような態度だった。
これから先、
一緒に住むようになっても、
お互いの気持ちが常に一致しているということはない。
私のほうが「彼女に対する気持ち」が強いこともあれば、
時には彼女のほうが「私に対する気持ち」が強いこともあるだろう。
人の気持ちなんてものは、
刻一刻と変化し続けているのだ。
だから、先日の私の態度は、
私の気持ちを彼女に対して一方的に押し付けた形になる。
これは反省しなければならない。
付き合ったからといって、
結婚したからといって、
彼女が、いくら私のことを頼りにしてくれるからといって、
彼女の心と体は私の所有物ではない。
そんな「当たり前のこと」を飛び越えて、
私は彼女のことを困らせてしまったのだ。
だけれども、あの腕に当たる胸の感触はズルい。
それを感じながら、私はお預けを食らい続けなければならないとは、なんとも耐え難いことだ。
やはり、男の性欲というものは厄介なもの。
まだまだ飼い慣らすまでには至らない。
彼女は、私のことを「紳士的な人」だと思い込んでいる。
だけれども、そんなことはない。
私の頭の中は、「腕に当たるあなたの胸の感触のことでいっぱい」なのだ。
そんなことをぶちまけたら幻滅されるだろうか。
抱きしめたい気持ちを抑えて、
唇を重ねたい気持ちを抑えて、
体を重ねたい気持ちを抑えて、
私はいつまで彼女に対する欲情を隠しながら、
彼女と時を過ごし続ければいいのだろう。
お互いがこじらせすぎた末に結ばれた関係だから、
距離の縮め方が難しい。
彼女を傷つけるようなことは絶対にしたくない。
だけれども、彼女だって私との体の接触を求めてくるのだ。
あとはタイミングだと思うのだけれども、
それがものすごく難しい。
私の我慢は、いつまで続くのだろうか。