これは私の実感なのだが、
不思議なことに彼女とキスをした日の夜は寝つきがいいのだ。
不安から解き放たれたかのように、
ぐっすりと眠り朝を迎えることができる。
複数回そういうことがあったものだから、
何やらキスには魔力があるのではないかと思い調べてみた。
どうやら、幸せホルモンの一つである「オキシトシン」が関係しているようだ。
これは、恋人や家族やペットとのスキンシップによって分泌されるホルモンで、
ストレスを軽減して、ポジティブな気分を誘発する作用があるらしい。
人体において敏感な部位である唇を重ね合わせることで、
その分泌は大きく促進されるとのことだ。
なるほど、
私は彼女と唇を重ねることで、幸せホルモンを分泌しているのか。
確かにキスをした後の彼女の様子はとても嬉しそうだ。
私の方も表面にはあまり喜びを出していないつもりでいるけれど、彼女からしたら「嬉しそう」に見えるらしい。
自然とにやけているくらいだから、おそらく精神的には少なくない作用が働いているのだろう。
そこまで行っても、いまだに確かめるまでは至らないのだが、唇の感触を心地よいと感じるのだから、おそらく私と彼女は体の相性が良いのだ。
体が接触していることに違和感はないし、
一緒にいるときは手を繋いでいる時間が長い。
唇の感触はお互い心地良いと感じている様子だし、
彼女の匂いも好きだ。
まさか、これで体の相性が悪かったら行為を行うこと以外に判断のしようがない。
あとは実戦で確かめるしかない。
その時は徐々に近づいている。
お互いにお堅い性格をしているものだから、気恥ずかしさが先行して体を求めている素振りはしないけれども、心の中では、お互いに求め合っていることは明白だ。
唇の感触からそれは伝わってくる。
もう少し、もう少しだけ今の余白を楽しみながら、私は彼女の体に思いを馳せる。
唇を重ねるだけでも、これだけ気持ちに作用するのだから、体を重ねた時には私はどうなってしまうのだろうか。
まだしばらくは、それを楽しみにしながら過ごすことになりそうだ。