「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

あなたは余っ程度胸のない方ですね

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夏目漱石三四郎

行きずりで誘われた女性と一夜を共にするも、

手を出さなかった三四郎に対しての女性の一言、


「私だなぁ」

そう思った。


何度もチャンスは転がっていたのに、

それを掴み損ねて後悔する。


高潔な精神だとか、

誠実さだとか、

そんなものが先行して、


人生には段階があって、

するべき時に経験すべきことを飛び越えてしまうと、

すっぽりと穴が開いてしまう。


その穴に気がつかずに生きていれば問題はない。


「人並みの人生」


それに目を向けた時に、

自分に足りないものが否応なしに牙を剥く。


「自分は経験していない」

 

恋愛も中途半端、

体を重ねた経験はない。


その手の話題になるたびに、

それとなくごまかしては、

虚しさを感じて、


「大きな欠落感」


それを埋めるためにがむしゃらに動いている。

 

愛だの恋だのよりも先に、

そちらが顔を出しているのかもしれない。


そうやって考えすぎて、

また逃げる理由を探している。


私が恋愛できないことは、

自然の摂理なのかもしれない。

物理的に仕方のないことなのだ。


いや、そんなことはない。


出会うべき人がいて、

その人に出会うために、

誠実に覚悟を差し出すために、

こういうシナリオが描かれたのだ。


そんな妄想にしがみついて、

自分を奮い立たせる。


そうしないと、

三四郎の二の舞、


「あなたは余っ程度胸のない方ですね」


二十歳そこそこならば、

綺麗な話にまとまるだろう。


だけれども、

そんなもどかしさを、

この歳になってまで経験したくないな。


いくつもチャンスを逃してきた。

そうやって苦しむのはもうたくさん。