あまりにも自然に、
さも私が結婚しているかのように問いかけられる。
「ますをさん、お子さんは?」
「奥さんとは仲がいいのですか?」
「これ、奥様にどうですか?」
そのたびに、
「結婚していないんです」
若干気まずい雰囲気が流れる。
ご期待に添えずにどうもすみましぇ~ん。
そうやって「しぇ~」のポーズでもすれば、
場は和むのだろうか。
だって私、指輪していないでしょ。
それとも指輪をしないくらい夫婦生活に溶け込んでいるほど、
長いこと相手がいるように見えるのか。
もうその問いかけにはだいぶ慣れたけれど、
心がささくれ立たないといえばウソになる。
そして、そのたびに「私ってそう見えるんだな」って思う。
一応はまだアラサーだ。
言うほど年は食っていない。
見た目だって若く見られることもある。
だけれどもそう見られるのだ。
「結婚していそうな雰囲気」
そういうものってあるのかもしれない。
私には姪がいる。
この前は夫婦と一緒にスーパーで買物、
お守りを任されてカートに乗せてあやす姿は、
父親に見えていたのかな。
子育ての大変さって色々見てきたから、
そういう疑似体験で十分かもしれない。
年を取るほどに、
色々なものが見えてしまうから、
飛び込むのにだって勇気が必要になる。
理性が先に来てしまうから、
なんだかタガは外れない。
女性だって経済的に自立しているから、
きっと見る目は同じなのだろう。
「子供のこと」
婚活で会った多くの女性には、
姪だか甥がいた。
そして良好な関係を築いているみたい。
そうなるとそれで満足してしまうのだろうな。
「孫の顔が見たい」
兄弟に子供がいれば、
親に対するその手の責任は、
すでに果たしてくれている。
そうやって理屈をつけて、
男女ともに無理して結婚しようとしない。
子供のことさえ考えなければ、
タイムリミットは大幅に延長される。
青春とまでは行かなくても、
いつまでも身を固めずに朱夏でいられるのだ。
「終わらない夏現象」とでも名付けようか。
「お二人様」
そういう家族のカタチが今後は増えていくのかな。
傍から見ているとそれも幸せそうに見える。
本人たちが良ければ、
別にとやかく言われる筋合いはない。
「結婚していないんです」
そうやって心をささくれ立たせることもなく、
にこやかに返すことができたならば、
私も大したものだ。
いちいち「察してよ」ってささくれだっているうちは、