人の愛し方がわからないから、
そのための練習をする。
うまくやっている人のマネをして、
親しげに話しかけてみる。
どうも怪訝な顔で見られるな。
僕の顔をちらりと見ては、
みんな通り過ぎてしまう。
あの人と同じようにしているはずなのに、
うまくやっている人のマネをして、
優しく体に触れてみる。
触れた途端にみるみると、
驚いたような表情に変わり、
サッと跳ね除けられてしまったな。
どうしてだろう?
あの人たちはとても嬉しそうに触れ合っているのに、
うまくやっている人のマネをして、
唇を重ねてみようとする。
「何するの!」って声といっしょに、
すかさずビンタが飛んできた。
おかしいな。
あの人たちは唇を重ねた後も、
ギュッと強く体を寄せ合っているのに、
僕はアンドロイド、
人の愛し方がわからない。
うまくやっている人のマネをして、
うまく人を愛したいのに、
僕はアンドロイド、
人を幸せにするために生まれてきた。
なのに人を愛せない。
僕はどうして生まれてきたのだろう。
君の笑顔が見たくて、
少しおどけてみせた。
そうすることで、
君が喜んでくれるとインプットしておいたから、
前と同じようにおどけてみせた。
どうやら君の口角が39度ほど上がったみたいだ。
「サンキュー」
その笑顔から、
「ありがとう」の言葉を受け取った。
僕はアンドロイド、
人の気持ちがわからない。
「嬉しい」
「悲しい」
「好き」
「嫌い」
「愛してる」
「愛していない」
そういうのを全部、
数字で表してくれれば僕にだってわかるのにな。
私は人間、
だけれども人の気持ちがわからない。