そんなものは挙げればきりがない。
元はと言えば、
赤の他人同士なのだから、
そういうことばかりに目が向いたら終わり、
恋愛は幻想の中でしか存在できないのだ。
甘く切なく綺麗なままの美しい世界、
世界の中心にいる二人、
周りのことは見えない。
「お互いがいればそれでいい」だなんて、
本気でそう思っているうちが華、
魔法は解けてしまうのだ。
それでも一緒にいたいと思う理由があるのか。
それが先に進む条件なのだろう。
男と女なんて単純なもの、
違う生き物だから惹かれ合う。
そして欲求を満たした先は「条件」が必要、
その「条件」と睨めっこしながら、
先に進む理由を探すのだ。
いくつもいくつも探して探して、
これでもかというくらいに材料を探して、
少しでも安心しようとする。
材料一つ見つけたら、
心躍らせて、
材料一つ失ったら、
停滞するどころか遠ざける。
何か一つでも決定的な躊躇する理由があれば、
今まで積み重ねてきたたくさんの思い出たちは、
音を立てて崩れてしまう。
人は不安には勝てない。
安心の材料はたくさん必要なのに、
不安に必要なのはただ一つだけなのだ。
何も進まない。
何も進めない。
何一つ動かない。
人は余程追い詰められない限り、
環境を変えたくはないのだ。
だから、
変わらなくていい理由を、
いつだって探している。
理由は外にあるのではない。
自分の中にあるのだ。
先に進まなくていい理由を探しているうちは、
結婚なんてできるはずがないな。