Amazonプライムのウォッチリストに入れていたけれど、
しばらく放置していた作品だ。
第一話を紐解くと、「これは、」と思いハマってしまった。
この作品は「ものを手に入れる喜び」を実に瑞々しく描いている。
「初めての一歩」
生きていればそういう経験を何度も繰り返していく。
そのうちに「喜び」は失われて、「重圧」の比重が増していく。
そうやって人は、手に入れることにモチベーションを保ちにくくなる。
どんどん保守的になる。
どんどん冒険を避けるようになる。
新たな一歩を踏み出す足どりは徐々に緩やかになり、
立ち止まっては歩み出すことを繰り返し、
やがて足は重りをつけたかのように動かなくなる。
歳を取るってことはそういうことなのかもしれない。
「何もないところからの一歩」
親もいない。友達もいない。将来の目標もない。
そんな女子高生が「中古のカブ」と出会う。
免許もないのに一目惚れのように買うことを決めた。
その踏み出した一歩、
そこから彼女の人生は大きく変わっていく。
「乗り物」を題材にしたことがすごくいい。
「世界を広げる象徴」だ。
無色透明で薄暗かった彼女の日常に灯りが灯る。
友達ができて、
アルバイトを始めて、
行動範囲は広がっていく。
芽生えた「遠くへ行きたい」という欲望、
「夢中になれるもの」
それが生きる活力となるのだ。
彼女の世界、
自らの心に蓋をして、
それ以上は見ないようにしていた。
期待しないようにしていた。
その蓋を少しずらして、
中から外の世界を覗いてみると、
驚くほど輝いて見えた。
恐る恐る、蓋をずらしていくと、
少しずつ見える範囲は広がっていく。
誰もがそうやって、
世界を広げている時期があったはず、
いつの頃からか、
手に入れたものを部屋の中に引き入れて、
開けていたはずな蓋を徐々に閉めていく。
「自分のやり方」
そういうものの雁字搦めになっていき、
柔軟性は失われていくのだ。
世界は常に目の前に広がっているのに、
手の届く範囲だけで満足してしまう。
そうして人生は終わりへと向かっていく。
「手に入れること」と「手放すこと」
その比率は生きるにつれて変わっていくのだ。
「手に入れること」に貪欲だったあの頃、
もう一度あの頃に戻ることはできないのかもしれない。
それでも、自分なりに前へと進み続けたい。
「手に入れる喜び」
「できなかったことができるようになった喜び」
そういうものは幾つになっても確かに存在するのだ。
そこに「喜びを感じられる人生」であり続けたい。
まだまだ少しずつ、自分の中の世界を広げていきたい。
「やり切った」と思えるところを人生の終着点としたい。
少し昔を思い出して、
爽やかな気持ちになれた。