「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

アニメ『スーパーカブ』に見る「手に入れる喜び」

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Amazonプライムのウォッチリストに入れていたけれど、

しばらく放置していた作品だ。

 

第一話を紐解くと、「これは、」と思いハマってしまった。

この作品は「ものを手に入れる喜び」を実に瑞々しく描いている。

 

「初めての一歩」

 

生きていればそういう経験を何度も繰り返していく。

そのうちに「喜び」は失われて、「重圧」の比重が増していく。

 

そうやって人は、手に入れることにモチベーションを保ちにくくなる。

 

どんどん保守的になる。

どんどん冒険を避けるようになる。

 

新たな一歩を踏み出す足どりは徐々に緩やかになり、

立ち止まっては歩み出すことを繰り返し、

やがて足は重りをつけたかのように動かなくなる。

 

歳を取るってことはそういうことなのかもしれない。

 

「何もないところからの一歩」

 

親もいない。友達もいない。将来の目標もない。

そんな女子高生が「中古のカブ」と出会う。

免許もないのに一目惚れのように買うことを決めた。

 

その踏み出した一歩、

そこから彼女の人生は大きく変わっていく。

 

「乗り物」を題材にしたことがすごくいい。

「世界を広げる象徴」だ。

 

無色透明で薄暗かった彼女の日常に灯りが灯る。

 

友達ができて、

アルバイトを始めて、

行動範囲は広がっていく。

 

芽生えた「遠くへ行きたい」という欲望、

「夢中になれるもの」

それが生きる活力となるのだ。

 

彼女の世界、

 

自らの心に蓋をして、

それ以上は見ないようにしていた。

期待しないようにしていた。

 

その蓋を少しずらして、

中から外の世界を覗いてみると、

驚くほど輝いて見えた。

 

恐る恐る、蓋をずらしていくと、

少しずつ見える範囲は広がっていく。

 

誰もがそうやって、

世界を広げている時期があったはず、

 

いつの頃からか、

手に入れたものを部屋の中に引き入れて、

開けていたはずな蓋を徐々に閉めていく。

 

「自分のやり方」

 

そういうものの雁字搦めになっていき、

柔軟性は失われていくのだ。

 

世界は常に目の前に広がっているのに、

手の届く範囲だけで満足してしまう。

 

そうして人生は終わりへと向かっていく。

 

「手に入れること」と「手放すこと」

その比率は生きるにつれて変わっていくのだ。

 

「手に入れること」に貪欲だったあの頃、

もう一度あの頃に戻ることはできないのかもしれない。

それでも、自分なりに前へと進み続けたい。

 

「手に入れる喜び」

「できなかったことができるようになった喜び」

そういうものは幾つになっても確かに存在するのだ。

 

そこに「喜びを感じられる人生」であり続けたい。

まだまだ少しずつ、自分の中の世界を広げていきたい。

「やり切った」と思えるところを人生の終着点としたい。

 

少し昔を思い出して、

爽やかな気持ちになれた。