誰しもが抱く「無垢」に対する憧れ、
だけれども、
生きているだけで心は汚れてくるのだ。
どんどん薄汚くなってしまっていき、
何かの拍子に一線を越えてしまうと、
「無垢」はもう二度と手に入らない。
その「絶望」に直面したときに、
「まだ手にしているもの」に対して、
自らの感情をどう処理するのか。
「無垢」に対するアプローチの仕方、
そこに「性癖」の分かれ目があるように思う。
サディストは「無垢」を破壊しようとする。
マゾヒストは「無垢」を自分から遠ざけようとする。
「無垢」に対する攻撃、
「無垢」は苦痛を苦痛としか感じられない。
「悪意」を理解する術を持たないからだ。
サディストにとって、
「無垢」は格好の攻撃対象だ。
だから児童虐待なんて痛ましいことが起こる。
「支配欲」
支配する対象が誰でもいいわけではない。
「従順」であればあるほどいい。
だから「立場の弱いもの」を屠る。
「無垢」に対する支配、
「憧れているものを手に入れた」という錯覚、
サディストたちは、
それによって快楽を得るのだ。
対してマゾヒストたち、
自身を汚らわしく扱うことで、
自身を「無垢」から遠ざける。
「憧れはかなわない」
そのことを自分に言い聞かせることによって、
「絶望」を遠ざけようとするのだ。
「無垢」からの解放によって快楽を感じる。
「無垢」である必要はないんだって、
自ら泥に塗れることで「憧れ」を捨てようとする。
マゾヒストたちは、
そこに救いを求めているのだ。
「無垢」であり続ける。
まともに人生を歩んでいたら不可能なこと、
いろんな「悪意」にさらされて、
その「悪意」によって、
見える世界は徐々に薄暗くなっていく。
見えていたものは見えなくなり、
見たくも無いものばかりと親密になる。
知らぬ間に闇の世界の住人に変わっていく。
信じる気持ちは裏切られて、
「疑心暗鬼」に苛まれているうちに、
気がつくと自分も誰かを裏切っている。
BUMP OF CHICKEN『レム』
誰かが呟いた「汚れてしまった」
その肩を叩いた、その手も汚れてた
とても印象的な歌詞、
「汚れてしまった」と嘆く姿を励ます、
その手も汚れていた。
「生きる」だけで、
少なからず誰かの人生を消費している。
そして自分の人生も、
誰かによって消費されている。
「与える」ばかりでは疲れてしまうし、
「いただく」ばかりでは自尊心を損ねる。
与えても、与えても、
いただいても、いただいても、
それを喜びに変えられるのが、
「無垢」の力、
人は「社会」という便利なものを手にした代わりに、
その「社会」に適応することを求められて、
その中で生きているうちに、
「無垢」を手放さざるを得なくなってしまった。
「イヤイヤ期」の甥を見ていて感じるけれど、
アイデンティティを形成する前の人間、
人の始まりがこれならば、
人は本来「無垢」なのだ。
欲しいままに求めて、
思うがままに与える。
恣意的で、打算のかけらも無い。
ただ、求めて、
ただ、与える。
誰もが気がつかないうちに、
失ってしまった「無垢」に対する立場を決めて生きている。
それが性癖となって現れる。
おそらく、
そういうことなんじゃないのかな。
