しばらく会っていないのだけれども、昔仲の良かった友人が好きな曲だった。
私はあまりイエモンを聴かないけれど、最近この曲を聴く機会があって、とても示唆的で、今の世界情勢に通じるものがあると感じた。
みんな自分と関係のある範囲だけで手一杯。
その範囲を超えた事柄に対しては、心を痛めることはあっても何もすることはできない。
世界の平和を望んではいるけれど、
私たちはあまりにも無力なのだ。
西加奈子『i』
この小説の主人公であるアイは、誰かが亡くなったことをニュースで目にするたびに、それをノートに書き留めておく。
不幸な境遇から幸せな家庭に引き取られた自分は、この人たちに申し訳ない。
自分が死ぬべきではなかったのではないか、と素直に幸せを受け入れることができないのだ。
天童荒太『悼む人』
主人公は、仕事を辞めて、亡くなった人を悼むために、その現場へと足を運び祈りを捧げる旅に人生の軸足をシフトする。
彼が語るには、今の自分は「そうしないと生きていけない」と言う。
人は、生い立ちや境遇によって、多種多様な価値観を持っている。
「共感」の範囲が極端に広くても、自尊心を傷つけてしまう恐れがあるし、それが極端に狭いと、誰かを傷つけてしまうことになる。
「世界の痛み」とでもいうべきものをどこまで引き受けるのか。
それは個々に委ねられた課題なのかもしれない。
自分には何もできないかもしれない。
だけれども、目の前の愛を育むことにも意味はあるのかもしれない。
ただ、悪意に侵されることなく、周りの人たちに愛を伝えていくこと。
そこから生まれてくるものはあるのだ。
そして、1人でも多くの人が、自らの悪意を制して、周りを愛することができるようになれば、争いの範囲は縮小するはずだ。
「自分がどう生きるのか」
自分の人生だから好きに生きればいい。
だけれども、葛藤しながら生きている人は強い。
好きなことに身を委ねながらも、どこか悶々として、世界の痛みを少しだけ引き受けて生きる。
みんながそうやって生きていければ、
それが、優しい世界に繋がるのかもしれない。
THE YELLOW MONKEY『JAM』