私の世代であれば、『SLAM DUNK』を見てバスケを始めたという人も多いだろう。
かく言う私もその一人である。
それほど影響力の大きな作品だ。
少年ジャンプでの連載終了は1996年である。
それから26年を経ても語り継がれる伝説の作品と言える。
その『SLAM DUNK』が、構想から8年かけて映画化された。
それが表題の映画である。
事前情報はほぼなく、下馬評は散々なものだったが、いざ公開してみると反響は大きく、先品の出来が素晴らしいことから、大ヒットに繋がっている。
舞台は、原作ラストの湘北高校-山王工業高校戦。
主役である神奈川県代表の県立・湘北高校は、無名校でありながら、強力なチームメイトが集結することになり、次々と県内の強豪校を破り、インターハイへと出場することになる。
そこで湘北高校を迎え撃つのは、絶対王者であり、現世代が史上最強とも謳われる秋田県代表・山王工業高校。
両者の選手それぞれの想いが入り混じる試合は、冒頭から波乱の展開を迎える。
私はこの試合が、全てのスポーツ漫画の頂点に立つ試合だと考えていると、前に記事にした。
いまだに私の中で、この試合を超えるほど熱狂する試合には出会うことができていない。
対戦相手を含めた登場人物の背景を丹念に描き、スポーツ漫画としての疾走感も申し分ない。
その作品を映画化したのだから、ストーリーは外れるわけがない。
アニメ作品であることの特性を活かし、綺麗に描いた線の重なりは、もはや芸術作品と言えるほどだ。
「とてもよくできた作品」
素直に総評することのできる素晴らしい映画だ。
主人公は、原作の桜木花道ではなく、そのチームメイトの1人である宮城リョータ。
彼の背景は、原作で語られることはほとんどなかったが、その生い立ちを中心に、彼の視点で試合は進んでいく。
原作と同じ舞台でストーリーが進むも、完全に映画オリジナルの部分は多い。
原作を読み倒した私でも楽しめる内容であり、宮城リョータ推しにとってはたまらない作品だろう。
しかし、尺の都合からか、原作を全く知らない人にとっては、あまり感情移入できないような印象を受けた。
この映画を見てから、20代前半の後輩と話をしていた時に、彼は『SLAM DUNK』を見たことがないと言っていた。
無理もない。
彼が生まれる前に連載終了した作品だ。
そう考えると、私も歳をとったものだと感じる。
それはさておき、これを機に原作を手に取る層が出てくるのであれば、それこそメディアミックスとしては大成功だ。
そして、この映画のタイトルには「FIRST」という文字が含まれている。
そうなると、2nd、3rdと続編があるのではないかという期待につながる。
思えば、原作も匂わせた形で終了している。
「第一部終了」
少年ジャンプに掲載された最終話には、確かにそう記載されていたのだ。
そのような形で連載を終えてから、26年間の月日が流れた。
先の未来が描かれる可能性を、作者である井上雄彦氏は、とあるインタビューで「ある」と宣言している。
いよいよ、その時が来たのだろうか。
長年の沈黙を破って、ようやく世に出た『SLAM DUNK』作品。
この作品を皮切りに、また新たな世界が広がることを、原作ファンとして期待する。
これからの『SLAM DUNK』が楽しみだ。