突然の申し出だった。
まさかの提案に戸惑った。
嫌な予感しかしない。
またか。
いつだってうまくいかない。
「申し訳ないけれど、もう会うのをやめましょう」って、
そんな結末が頭をよぎる。
わざわざ電話でなんて律儀なことで・・・
「何時ごろにしますか?」
恐る恐る時間を確認すると、
「できれば寝る前くらいが良いです」って、
そう返ってきた。
「えっ」と思いながらも、
「ほっ」と胸をなでおろす。
まさかその提案で「お断り」はないはず、
そんなことをする奴はただの変態だ。
会うまでに時間が空いたから、
向こうも不安に感じていたみたい。
メッセージはあまり得意ではないようだし、
とんでもなく仕事が忙しかったから、
返事が滞っていたけれど、
気持ちが切れていたわけではなさそう。
1時間くらい色々なお話をした。
会う日のことから、
仕事のこと、悩んでいることまで色々と、
「うんうん」って、
ひたすら話を聞いた。
吐き出したいことがなくなるまで、
いくらでも話していていいよって、
そう伝えて、
最後は「ありがとう」って、
「また明日からも頑張る」って、
そう言ってくれた。
ずいぶんと時間が空いてしまったけれど、
少し言葉をかわしただけで、
グッと距離は縮まった。
言葉って不思議、
「心はつながっている」
そう信じられなくなりかけていたけれど、
少しの時間を共有するだけで、
それを信じるに足る根拠を与えてくれる。
あとは会ったときに不安材料を見せあって、
それでもお互いが前に進む選択をできるかどうか。
あと一歩、
「絶対に彼女を作る」って決めた目標の3ヶ月間、
そこまではまだ半分も経っていない。
どうやら私が本気になれば、
3ヶ月なんて時間は必要なかったようだ。
私ってモテるのだから、
少し連絡が取れないだけで、
うろたえて卑屈になっていたくせに、
予防線を張ろうとネガティブに引き寄せられていたのに、
私って単純、
いや、この気持ちが単純に変えてくれた。
右に左に振り回して、
気持ちは少し落ち着かない。
「余裕を持って人を好きになれる人ってこの世にいるのかな」
あいみょん『ら、のはなし』
おそらくいたらそれは恋ではない類の「好き」なのだろう。
想いは募る。
でも、
「遊びではない」
それは彼女も言っていたこと、
楽しいだけの恋愛を求めているわけではない。
まだ超えなければならないハードルはある。
手を取って、
一緒にそのハードルを超えるために、
少なくとも私の方は、
一歩も引かない覚悟を決めなくてはいけないな。
調子に乗っていると、
足元を救われてしまう。
なんてったって、
10年以上もすれ違い続けているのだから、
生粋の恋愛ベタ、
恋愛ベタマスター、
私のヘタレさを舐めてはいけないのだ。
ありったけの勇気を出して、
あの子に気持ちを伝えたい。