「童貞のまま結婚した男」の記録

元「30代童貞こじらせ男」 30代後半まで童貞で、そのまま結婚した男の記録です。

群青

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深く深くへと沈んでいく。

 


どれだけ沈んでも「底」にはたどり着かないみたいだ。

このまま永遠に沈み続けるのだろうか。

 


ふと瞼を開くと、目の前に差し伸べられた手、

視線を上へと向けていくと、見知った顔がこちらを伺う。

 


いったいここがどれほど深くだと思っているんだか。

こんなところまで潜ってきやがって、

 


心の中でそんな悪態をつくけれども、

氷のように固まっていた自分の口角が、

少し上へと動いたことを自覚する。

 

 

差し伸べられた手が微かに動く。

「早く掴め」と催促するようにゆらりとこまねく。

 


その手を掴むと、

ものすごい速度で引き上げられていく。

 


目を開けることもできない。

ただ掴んだ手を離さないようにするだけで精一杯、

 


どんどん引き上げられていく。

 

その心地よさに身を委ねていると、

瞼を閉じていてもわかるくらいのまばゆい光、

 

 

その光に包まれながら、

勢いよく海面に飛び出すと、

そこには無限の空が広がっていた。

 


見下ろすと一面「群青」

 


その境目には一本の線、

「空」と「海」を隔てるものは、

ほんのわずかな一本の線だった。

 


広い世界に飛び出して、

はじめてそのことを知った。

 


その中に沈んでいた時は気が付かなかったけれど、

力強く光を照らし返す「群青」は、

この世のものとは思えないくらいに、

とても美しいものだった。