深く深くへと沈んでいく。
どれだけ沈んでも「底」にはたどり着かないみたいだ。
このまま永遠に沈み続けるのだろうか。
ふと瞼を開くと、目の前に差し伸べられた手、
視線を上へと向けていくと、見知った顔がこちらを伺う。
いったいここがどれほど深くだと思っているんだか。
こんなところまで潜ってきやがって、
心の中でそんな悪態をつくけれども、
氷のように固まっていた自分の口角が、
少し上へと動いたことを自覚する。
差し伸べられた手が微かに動く。
「早く掴め」と催促するようにゆらりとこまねく。
その手を掴むと、
ものすごい速度で引き上げられていく。
目を開けることもできない。
ただ掴んだ手を離さないようにするだけで精一杯、
どんどん引き上げられていく。
その心地よさに身を委ねていると、
瞼を閉じていてもわかるくらいのまばゆい光、
その光に包まれながら、
勢いよく海面に飛び出すと、
そこには無限の空が広がっていた。
見下ろすと一面「群青」
その境目には一本の線、
「空」と「海」を隔てるものは、
ほんのわずかな一本の線だった。
広い世界に飛び出して、
はじめてそのことを知った。
その中に沈んでいた時は気が付かなかったけれど、
力強く光を照らし返す「群青」は、
この世のものとは思えないくらいに、
とても美しいものだった。