結婚してしばらく経った。
妻との生活も様になって来て、今年は子供が生まれる予定だ。
そうなると頭は家族のことでいっぱいだ。
独身の頃は、若くて綺麗な女性に対して密かに色めきだったりもしていたが、今はそのような感情はない。
ただ「きれいだな」と思うだけで終わるのだ。
そこから先の展開を機にする必要がないから、変な期待をしなくて済むのだ。
独身の頃の私は迷走していた。
変にモテていた期間があったものだから、チャンスが舞い込むたびにあたふたしては、チャンスを逃し続ける。
その繰り返しの中で男としての自尊心は著しく傷つけられて、次のチャンスは逃さまいと躍起になる。
特にアプリで婚活をしていた時期はおかしかった。
1ヶ月で10人近くと会った時は、女性のことを人としてみることができていたのか、今振り返ると自信がない。
ドラマ『婚活1000本ノック』
3時のヒロインの福田さん演じる主人公が、イケメンのクズ男に捨てられて、このままでは終われないと婚活に勤しむ。
「アリかナシか」
異性と会うたびにそのジャッジをしなければならないストレスと、条件で選ぶならばアリなのだが、どうしても生理的に受け付けることができずに前に進めないもどかしさがリアルに描かれている。
「婚活」というものは、互いに品定めをしているのだ。
お互いの利害が一致しなければ先に進むことはない。
「条件だけを見ればアリ。相手のことを好きになりたいけれども、どうしてもそれができない」
それは私も何度も経験したし、私に対してそう思った女性もいたはずだ。
「自分が相手に求めるレベルは、自分を客観的に見た場合の自己評価レベルとほぼ一致する」
普段は自信がなかったとしても、婚活になると自己評価の高さが浮き彫りになる。
結婚相手に求めるものが明確ではないと、「なんとなくピンとこない」という言葉で相手を拒み続けるのだ。
若さや容姿、収入や家柄。
無意識に相手のことを総合的に評価して、それを自己評価と照らし合わせる作業。
その繰り返しは苦痛だった。
どこか不自然な出会いを繰り返してでも、なんとか前に進んでいる実感を得たくて、婚活に勤しむ男女。
婚活アプリの利用登録者は、少子化に反して鰻登りらしい。
話の落とし所がわからなくなったが、今の私は、女性に対して何かを期待することは無くなった。
家族のことだけを考えていればいいのだ。
おそらく、それは幸せなことなのだ。