高校生の時に取っ組み合いの喧嘩をした。
それまでも何度かそういうことはあったけれども、
一度も勝てたことはなかった。
だけれども、
この時に初めて勝ってしまった。
父に馬乗りになりながら泣いたことをよく覚えている。
エディプスコンプレックスとは、
また違うものなのかもしれないけれども、
父親に対する克服と支配からの脱却、
自分の力でこれからを生きていかなければならないという、
社会不安の芽生えだったのかもしれない。
そこから来る涙、
今振り返ってみるとそう思う。
どちらかといえば口うるさい、
そのくせに家のことは母親に任せきり、
そんな家父長的な父親だった。
だけれどもいつかを境に、
家族に対して気を使うようになった。
リストラからの再就職という大きな挫折を経験している父、
50に近かったのではないだろうか。
そこから畑違いの仕事に就いた。
大黒柱としてのプレッシャー、
そういうものはあっただろう。
辛い思いをしながら必死に家族を支えてくれた。
母には話しているのかもしれないけれども、
そういうことを言葉にしているのを聞いたことはない。
そういう父親、
似たところがあるのだろうか。
席を共にするとイライラすることがたくさんある。
不器用だけれども悪い人ではない。
そんな父と言葉を交わす機会は、
随分と少なくなったけれども、
今日は父の日、
普段は伝えることのない、
感謝の気持ちを伝えに帰ろうと思う。
酒でも手土産に、
言葉を交わす時間、
それを設けることにしよう。
いつまで元気でいられるかわからない。
後で後悔するようなことはしたくない。
今日は、
「ありがとう」を伝える日、
男だって、
色々大変なんだよね。
お父さん、