秋分、
だいぶ日は短くなった。
夜が幅を利かせてくるのだ。
丸くて大きい月を主役にして、
星たちはここぞとばかりに躍動する。
そんな輝きに包まれて、
心を寄せる人と一夜を過ごせたならば、
どんなに素敵なことだろう。
月から主役の座を奪って、
舞台の真ん中に二人寄り添って、
「きれいだね」
「君のほうがきれいだよ」
甘い言葉をささやきながら、
その手の感触から伝わる体温に、
君が隣にいることを確かめて、
大きく息を吸う。
「まだここにいるよ」って、
夏がそう主張するかのような新緑の匂いに包まれる。
こうして季節は移り変わるのだな。
それぞれが「まだ終わりたくない」って思いながらも、
主役の座を取って代わられる。
次の晴れ舞台は一年後、
その日に向けて長い準備に入る。
お日様は顔を出す時間を減らして、
月にその座を明け渡し、
ひまわりたちはその種を土に落とし次の世代へ、
蝉たちは土の下で何年もの時を過ごして、
命を燃やす1週間という短い日々を待ちわびている。
そうやって変わるのだ。
いつまでも主役ではいられない。
見えないところで力を蓄えて、
長い長い時を経て、
ようやく日の目を見る。
諦めてしまわない限りは、
多くの女性の間をくぐり抜けてきた夏、
交わることはなかった。
文字通り、
くぐり抜けてきたのだ。
そのたびに経験値を積み重ねて、
少しばかりレベルアップをして、
そうして終わった夏、
この長い夜だって味方につけて、
次への活力にすればいい。
星たちは私の住処からは見えない。
だけれども暗い夜空の先で、
燦然と輝いている。
見えなくたっていい。
誰にも見られなくたっていい。
私らしさを見失わなければ、
それでいい。