「赤は止まれ」
「青は進め」
信号が「赤」から「青」に変わる。
「白」だけを踏んで進もうとしたけれど、
向かいから人が歩いてきた。
それを避けようとして、
少し斜めに踏み出したものだから、
「黒」を踏んでしまった。
一度そうなると次の一歩も「黒」
その次も「黒」
その次も…「黒」
一度踏み違えてしまうと、
意識して歩幅を変えてあげないといけない。
「白」に戻すために、
ずっと「白」を踏み続けていたら、
なんてことはないはずなのに、
これが意外と骨の折れる作業だったりする。
やはり「黒」
その次も「黒」
そしてまた「黒」
悪いことって重なるもの、
一度悪いことに遭うと防衛本能が働いて、
しばらくは悪いことにばかり目が向くようになる。
「なんて可哀想な私なのかしら」
悪いことばかりに目を向けて、
可哀想な自分を慰めるのだ。
「特別でありたい」
なんだかんだ人はそれを望んでいるから、
「ヒロイズム」によって自己承認欲求を満たそうとする。
だけれども、
それにも限界があるから、
そのうち自分の手に負えなくなる。
逃げ出したくなったならば、
横道に逸れてみればいい。
「黒」「黒」「黒」
それでも思いっきり、
横道に逸れてみればいい。
「黒」が続いたって、
横断歩道の縁は「白」
そこから歩みを進めれば、
その先はずっと「白」
「白」「白」「白」
だけれどもそうなると、
今度は「白」に飽きてしまう。
そして斜め前に一歩を踏み出して、
「黒」「黒」「黒」
また少し歩幅を調整して、
「白」「白」「白」
時には、
「白」「黒」「白」
そうこうしているうちに、
信号が「青」から「赤」に変わる。
どうやら時間切れみたいだ。
最後の力を振り絞って、
なんとか「白」で終える。
人生って、
そういうものなのかな。