これでもか、というくらいに食い倒れている。
妻は呆れ顔で私のことを見る。
しまいには「よく食べるね」と口に出す。
旅をしている。
ホテルの朝食はバイキングだ。
加えて昨夜はお腹がはち切れるくらいに食べた。
それでも朝食のバイキングで嫌になるくらいに食べ物を持ってきて、それを平らげる私のことを、妻が呆れるのは無理もない。
貧乏性だからか、私はバイキングとなると、これでもか、というくらいに食べる。
一通り気になるものは全てさらに乗せて、さらに美味しかったと思うものはおかわりをする。
デザートもしっかりと食べる。
デザートから本腰を入れる妻よりも多くのデザートを持ってきた私を見て、妻は「呆れる」を通り越して、引いていた。
欲望に正直に。欲望に忠実に。
私のバイキングに対する姿勢は、
至って人間の本願的な態度に沿ったものなのだろう。
人は古来より、狩に出かけて獲物を持ち帰ることに快感を感じていた。
木の実の獲物を仕留めた時の快感は、私たちのDNAに刻まれているのだろう。
だから、私のバイキングに対する態度は正しいのだ。
旅とは、自らの心を解放することを目的に行うものだ。
そうやって自己正当化して、お腹を痛くしながら日中を過ごす私の姿は、逆に何かに縛られているのかもしれない。
「バカなこと」をしても、優しく私のことを支えてくれる妻に感謝をしながら、私は今日も食い倒れるのだ。
妻がいるから、私は安心してバカなことができる。
結婚して良かったと、つくづく思う。